Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー第二章 第七話

 
日付が変わってしまった。
疲れた・・・、まさか自分が警察に聴取されるとは・・・。
反対に、こっちが何か聞き出してやろうと思ったが、さすがにそうは甘くない。
ただ担当の若い刑事は、「証拠さえあれば(例え警察OBでも)動く」 とは、言っていた。
信用して良いのだろうか?
帰り際、神父の姿が見えた。
話しかけるタイミングは今しかない。
あの、気になる遺書の中の記述の事を聞いてみたかったのだ。
遺書にあった、メリーという人形とは何の事なのか?
寒さで白い息を吐きながら、神父が車に戻る前に声を掛けてみた。
 「聴取、終わったんですか? ご苦労様です。」
神父は複雑な表情をしたが、すぐに礼儀正しく頭を下げる。
 「・・・先程は見ず知らずの方に、手伝って頂いてすみません、
 あの親子が、・・・祝福された土地に辿り着けるといいのですけれど・・・」
私は、一呼吸置いてから、
 「・・・あの親子の事を、詳しくお聞きしたいのですが?」 と尋ねたが、返答は冷たかった・・・。
 「マスコミの方には何も申し上げることは無い、と言った筈です。」
 「では、遺書の・・・人形の事を教えてくれませんか? メリーとは?」
初老の神父はこちらを見上げた。
 「何の事か、私にも分りませんな・・・、確かに遺書にありましたが・・・。」
神父は自分の車に乗ろうとしている。
全く立ち入るスキがない、でも負けるもんか。
 「い、いや、人形の件は、マスコミというより、子供の父親として・・・、
 夕方、ウチの子供が変なことを・・・言って・・・あ、アレ、何を言ってるんだろ?」
我ながら何を言っているのだ?
いくら神父を引き止めるセリフが思い浮かばないと言ったって・・・。
だが、意外にも神父は、私の言葉に興味を持ったようだ。
 「お子さんが・・・なにか?」 神父の動きが止まる。
 「え? ・・・ええ! 夕方、家に電話したら、
 4つになる娘が、『メリーさん』という人形に私が会うと、
 死んだ祖母に教えてもらったって言うんですよ。」 もういいや、言っちゃえ。
神父の驚いた顔は言葉に言い表せない。
しばらく神父は無言だったが、ようやく口を開いてくれた。
 「明日、朝、教会においでなさい・・・。」

・・・翌日、隣町で3人の男の斬殺死体が見つかるのだが、この時まだ私達はそれを知らない・・・。