Lady メリー第二章
「 お に ん ぎ ょ う さ ん が ね っ 、 ぱ ぱ に 『 あ り が と ね 』 だ っ て ! ! 」 (第二章「Ladyメリーの赤い手袋」終了) ─物語解説─
「あなた。」 「は・・・はい!」 百合子は滅多に熱くなることはない。 常にたんたんとこちらを責める。 「あれほど危険なことはしないでと、いったでしょう? 二、三日で帰るどころか警察にまで連行されて・・・ 自分の立場を分っているの? あなたに何かあ…
・・・それからしばらくして警察がやってきた。 私は重要参考人として何日も取り調べられた。 私の推測では、 県議会議員(命令)→秘書丸山(工作立案)→建設現場の三人(少女を自殺に見せかけて殺害) という仮説があったのだが、今となってはもはや無意味…
私が握り締めていたのは、コートと妻からもらった毛糸の赤い手袋だった。 私はほんの一瞬、それらに目をやり、再び人形の視線を追ってみる・・・。 やはり赤い手袋を見ているようだ。 人形は、ゆらゆらと微妙にカラダを動かしているが、先ほどからほとんど動…
私が振り返るのと、丸山の驚愕の咆哮、 どちらが先だったかは分らない。 丸山が顔を天井に向けたときには、既に人形は柱と天井に器用にしがみつき、 圧倒的に存在感のある不気味な鎌が、彼の首を射程距離内に収めていた。 ・・・まるでカマキリがエモノを捕…
私の頭上を巨大な何かがかすめ飛んだ! それは人形に激突して「彼女」は弾き飛ばされる。 かろうじて後ろを振り返ると、丸山がいた。 丸山が投げたのは、和室にあった巨大な壺のようだ。 大音響と共に「人形」は床に倒れる。 丸山はラグビーか柔道をやってい…
丸山は静かに出て行った。 騒ぎは静まろうとしない・・・。 私は必死に冷静になろうとした。 相手が例え危険な暴漢だとしても、これだけの人数の護衛がいてなぜ捕まえられない? 何か武器を持ってるのか? 「メリー」だとしたら死神の鎌を持っている・・・?…
突然、家中に叫び声が響き渡る! 私も丸山も視線をドアの外に向けざるを得ない。 程なく家のあちこちから、大勢の男達のドカドカという足音が聞こえた。 ドアを開けて、丸山は近くを通った男を呼び止める。 「どうした!? 何があった!?」 「竹下が・・・…
丸山の豹変に戸惑ったのはこっちだ。 「・・・? ちょ・・・え? 何のことです!? 今の電話のことですか? 私はあなたの番号なんて知りませんよ!」 丸山は立ち上がってこちらを見下ろした。 戦ったら、間違いなく勝ち目はないな・・・。 「では、何故 『メ…
丸山はゆっくりと携帯を取り出し、発信者を確認していた、 少し怪訝そうな表情をしていたのは私にも見て取れた。 「いや、存じませんでしたな。」 彼らの死にも、電話の着信にも彼は冷たい。 「で、不幸なことですが、当方にどういう関わりが・・・?」 私は…
『少々お待ち下さいませ。』 しばらくすると、インターホンのスピーカーから先程の女性の声が再び聞こえた。 カチャッ 『どうぞ お入りください。』 門のロックが開いたようだ。 周りからどよめきが起きる。 中に入ろうとすると、先程の知り合いが、 「伊藤…
・・・とは言ってみたものの、 高い塀に囲まれた大きな屋敷には、何者をも拒むような雰囲気が醸し出されていた。 入り口は閉じられており、脇に小さなインターホンがあるのみだった。 近くには何人かの報道関係者がいた。 顔見知りもいたので声をかけてみる…
「被害届けを出すかどうか悩んでいた少女が死んだ・・・ 既に被害届けを出していた他の女の子達はどう思ったのかな・・・。」 若い刑事は独り言のようにつぶやいた。 「まさか、脅迫・・・その為の材料にするためにあの子を・・・。」 自分の体が震えている…
突然、私の携帯が鳴った。編集長からだ。 「神父様、すいません、失礼します。」 神父はどうぞ、というジェスチャーをとる。 「ああ、編集長、おはようございます、すいません、正午までにはそちらに・・・? えッ!? 隣町で建設会社の作業員3人の斬殺死体…
「しかし、その老人の魔力を持ってしても、少女への呪いは解けません。 呪いをかけた本人でなければ、その呪いを解くことはおろか、 人形を動かす事すらできなかったのです。 ある時彼は、近くで非業の死を遂げた者がいると、 少女の人形がひどく反応する事…
少女は必死に叫び声をあげたり、壁を叩いて助けを求めますが、 魔法のためか母親は気づきません。 ○○○~ッ、今からお前を攫いに行くからねぇ~ アハハハハッ ほ~ら、家の中に入ったよぅ ○○○~ッ・・・ 今、階段の下にいるんだぁ、 どんな風に殺されるか想像…
ここからは神父の話になる。 この間、私には口を挟むことができなかった。 「 ・・・私がこの教会を任されて、もう20年になります。 この教会が建ってからは、私は三代目なのですが、 当初、この教会には、海外から越してきた信者が何名かおったそうです。…
朝の教会は、寒さの分もあるせいか、余計、荘厳に感じられる。 今朝は雲も厚く、陽の光も十分には降り注がない。 決して大きな教会ではないが、古びた感じがなお、その荘厳さを高めていた。 私が白い息を吐きながら、スカーフをかぶった修道女に案内されると…
日付が変わってしまった。 疲れた・・・、まさか自分が警察に聴取されるとは・・・。 反対に、こっちが何か聞き出してやろうと思ったが、さすがにそうは甘くない。 ただ担当の若い刑事は、「証拠さえあれば(例え警察OBでも)動く」 とは、言っていた。 信用…
神父は途端に身を翻し、奥へと戻っていったと思ったら、 すぐに外套と懐中電灯を用意して、再び姿を現した。 「あなたは新聞記者か何かですか?」 神父は私の身体を追い越し、慌ただしく靴を履き、表に出ようとしている。 容易ならざる事態が起きている事は…
ああ、麻衣はなんて可愛いんだろう? 一人悦に入ってると、携帯の向こうから「ママに代わって?」という妻の声が聞こえてきた。 『あなた?』 ハッと我にかえる自分。 「あ、ああ、何だい、百合子?」 『麻衣の言ったお祖母ちゃんの事は気にしないで・・・、…
夫婦はいずれ帰ってくるとは思うが、取材には答えてくれそうにはないだろう。 ホテルに戻るか、新聞社に立ち寄るか、 いや・・・、まずは家に連絡するか・・・。 「あーもしもし、百合子? おれ、ん、今、現場、結構長引きそう・・・ ん、 あ、 そうだ、 ・…
「どういうことですか!?」 「何故、被害者が自殺を!?」 記者会見現場では、物々しい雰囲気に包まれていた。 無理もない、 今まで被害届けを出していなかった被害者の死亡・・・、 しかも自殺した被害者の父親は、例の県議会議員の息のかかった地元企業で…
一方、こちらは拘置所・・・面会室。 「え・・・弁護士の先生・・・オレ、どうなんの?」 きれいに染め上げた髪の美形の青年は、面会に来た弁護士に気弱そうに尋ねた。 「心配はいらないよ・・・ お祖父さんやわたしが、全力で君を助ける、 気をしっかり持っ…
シュバッ! シュバッ! 「こっち、向いて!」 「被害者の女性達に何かおっしゃりたいことは!?」 カメラのフラッシュと質問の嵐・・・。 一人の男性が、報道陣に囲まれながら警察に連行されていた。 森村剛志21才・・・。 親が与えたマンションに、3人も…