Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

顔のない人形 その18

 「そうなんだ・・・オレはてっきり・・・。」
美香はきょとんとして振り返って聞きなおす。
 「てっきり・・・何?」
 「いや、なんでもない、
 ・・・ああ、この事件の謎がもう判明したのかなっ、て考えすぎただけ・・・!」
 「・・・そんな簡単な事件ならいいけどね・・・。」 
美香はコピーを終えたようだ。
また、それと同時に動画をそのままスロー再生できるソフトもぬかりなく落としている。
いつもながら仕事が速い。
下準備を全て終え、美香はディスクをスローにして再生してみる。
アユの歌が滑稽に思えてくる、それは仕方ない。
だが、先ほど映像の歪みのあった歌詞の部分になると、
タケルも美香もその神経を集中させた・・・。
雑音が聞こえ始めた・・・、
そしてその雑音の間に・・・
聞こえる・・・
他の音は音程が下がっているにもかかわらず、
やや、高めの・・・舌っ足らずにも聞こえる女性の声が・・・!

 『・・・クスクス・・・私メリーさん、お友達のみんな、私のところへ集まって・・・?
 私はいま、六本木の××にいるわ・・・!
 邪魔する悪い人たちは・・・殺しちゃいましょう・・・?』

タケルも美香も微動だにできなかった・・・。
映像は元に戻り、アユの新曲をスローで流し続けている。
 「タケル・・・。」
 「美香姉ぇ・・・、たぶん間違いねぇ・・・! こいつが今日子を呼んだ声だ!!」
美香は何度も先ほどの部分をリピートする・・・。
スピード調節も試している。
ある一定のスピード以上だと聞こえなくなるようだ。
気味の悪い女性の姿は、何度見ても生理的嫌悪をもよおすほど異様な姿をしている。
確かに映像そのものは、ぼんやりとピントがぼけているが、
顔そのものの判別が出来ないほどずれてはいないはずだ。
にもかかわらず、その顔は絵の具で上から塗りたくったように、目鼻立ちの区別もできない。
まるで顔がないみたいだ・・・。