Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

マザーメリー 顔のない人形

顔のない人形 最終話

・・・ ・・・・・・ 応接室では、 騎士団極東支部の者達が、事件の関係書類、ハード機器やディスクなどを回収していた。 当然、両手首をもがれた人形・・・マザー・メリーも合わせて運び出されている。 最終的には、海の向こうの騎士団本部に送られるのだろ…

顔のない人形 その62

タケルは後からゆっくりと近づいた。 ひょっとしたら兄貴になるのかぁ? と品定めをする為に・・・。 男と視線を合わせると、緊張気味に挨拶をする。 話しかけたのは男の方からだ。 「お? タケル君だね? 前よりもっと大きくなったんじゃないか!?」 「え…

顔のない人形 その61

タケルはいつの間にか立ち上がっていた・・・、 今日子に最後の別れを告げたようだ。 「美香姉ぇ、・・・もういいよ・・・。 ・・・? 美香姉ぇ? ・・・泣いてるの?」 言われて美香は、初めて自分の頬を涙が伝っているのに気がついた。 「・・・あら? ホ…

顔のない人形 その60

部屋の中には、先程と変わらず今日子の死体が横たわっている・・・。 タケルは再び、今日子の頭を抱きしめた。 必死で声を押し殺すものの、涙は止める事ができない。 美香は少し離れた所で弟の背中を見守った。 ・・・いつの間にかあんなに大きく・・・。 今…

顔のない人形 その59

美香の携帯にメールが届いていた。 服を着終わった彼女は、それを読むとすぐに電話をかける。 もう警戒する必要はどこにもない。 「・・・もしもし、いらっしゃってくれました? ・・・あら? はい・・・大丈夫です。 エレベーターはすぐに・・・、 はい。 …

顔のない人形 その58

それは、タケルがこれまで見知ってる如何なる舞踏にも、 似ているようで似ていない奇妙な舞だった・・・。 しめやかな神楽の様でもあり、 情熱的なフラメンコのようでもあり、 華麗な歌劇のプリマのようでもある。 緒沢家が伝えていたのは、遠い遙かな古代の…

顔のない人形 その57

(何だ何だあ!?) 下はさすがにそのままだが、上はライトグリーンのレースのブラだけだ。 ローライズのウェストからはブラとセットの下着も見え隠れする。 ・・・まぁ、普段、家で見慣れてるからどおって事は無いが・・・。 胸からは、いぶし銀のネックレ…

顔のない人形 その56

その質問は、すでに家督を継がないことが決まってるタケルにはきつい質問だ。 覚えちゃいねー・・・って。 「え・・・えーと、大昔のえらーい神様の子孫だってことだよな? 緒沢家は、元々そいつを祀る神職で、爺ちゃんの前までは神主だったんだよな・・・?…

顔のない人形 その55

勝負はついていた・・・。 タケルは再び人形のカラダを抑えたが、 人形のそのボディから、どんどん力が抜けていっているのも実感できる。 「美香姉ぇ! ・・・このまま全部やっちまえ!!」 タケルはこの後、美香がそこら中の電子機器を破壊しまくるかと思っ…

顔のない人形 その54

「ギィィィィッ!!」 人形が一瞬の戸惑いを見せた瞬間、タケルが後ろから羽交い絞めにする。 「美香姉ぇ! 今だ!!」 今の自分の力でどこまで持ちこたえられるか・・・? いや、美香姉ぇがケーブルを破壊してくれればそれで終わるはずだ! 美香は今一度、…

顔のない人形 その53

美香は、ゆっくり慎重に、壁際のケーブル配線の所まで向かっていた。 コイツを破壊すればパワーは弱まるか、うまくすれば止める事ができる。 タケルに注意が向けられている今しかチャンスはない。 ・・・タケル、持ちこたえて! あと2メートル・・・いや、…

顔のない人形 その52

タケルの記憶に浮かび上がったのは、美香の自分を叱責する声だ・・・。 (タケル! しっかりしなさい! 男の子でしょ!? 何を泣いてるの!?) いつも、姉は自分を叱ってた・・・。 優しい時もあった。 両親が死んで間もない頃、 彼女は拙い料理の腕で、自…

顔のない人形 その51

タケルは部屋の隅まで追い詰められつつも、何とか床に着地する事までは出来た・・・。 だが、これ以上は逃げようがない。 マザー・メリーは机の上から誇らしげにタケルを見下ろす・・・。 もう、次の一撃を避けることは出来ない・・・。 「あ・・・あぁ~あ…

顔のない人形 その50

人形の手足が床と壁に接した。 そしてタケルの右手は人形の抵抗の力を感じる。 「うっ・・・?」 急に人形の頭を動かす事ができなくなったばかりか、 人形は野獣のようなパワーを誇るタケルに逆らい始めた! ・・・ギ・・・ギギギ・・・ 関節をきしませなが…

顔のない人形 その49

『あっれぇ? よけられちゃったぁ? よぉ~し・・・次こそ当ててやるぅ!』 タケルの背後でモニターの声・・・。 醜悪な人形の顔と、 キャラゲーの声優のような、甘ったるいボイスのアンバランスさがタケルをいらつかさせる。 次の人形の攻撃を待つ前にタケ…

顔のない人形 その48

美香は、倒れ掛かった姿勢から必死に声を張り上げた。 「・・・無事よ! それより前を見なさい!!」 人形はゆっくりとだが・・・何事もなかったかのように立ち上がる。 机の上のモニターから声が聞こえてくる・・・。 『・・・やったわねぇ? 今度はメリー…

顔のない人形 その47

誰かが自分を見てる・・・ 美香は無意識に首を動かした・・・ その方向にあるのはスチール製の書類棚・・・。 いつの間にか扉は開ききっており、何かがそこにうずくまっている。 「 キリィィリヤァァァァーッ!!」 美香の視界いっぱいにそのおぞましい姿が…

顔のない人形 その46

『殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す! 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す! 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す! …

顔のない人形 その45

「そぉ・・・ね? とりあえず、コンピューター本体とハードディスク、増設機器で十分かしらね? まずは通信機器やっちゃいましょうか? あの化け物が現われても、もう、他の人からエネルギーを吸い取れなくなるわ。 それにコンピューターからだと、どれにプ…

顔のない人形 その44

タケルによって蹴り壊された壁の穴は、 せいぜい、二人同時に通り抜けてこれる程度の隙間でしかない。 しかも膝の高さまでは、壁の残骸が残っているので一気に向かってこられる心配もない。 こちらの部屋に入った瞬間、叩き潰せばよいのだ。 彼らはさながら…

顔のない人形 その43

二人は文面を読み終えていた・・・。 「狂ってるわ・・・。 暴走したのが自分だという事が分ってない・・・。」 「こんな奴のために今日子が・・・!」 二人ともすべき事は、もう分りきっていた。 ホストコンピューターを破壊する。 美香は事件解明のために…

顔のない人形 その42

『そしてそれはついに完成した! 度重なる実験の結果、 内部端末への電力しか供給してないはずの人形が動き始めたのだ! 私はついにやったのだ! 私の優秀なプログラマーのうち、何人かはこの計画に反対して辞めていった。 愚かな奴らだ、この壮大な研究の価…

顔のない人形 その41

『マザー・メリーは、元々一つのプログラムに過ぎなかった。 多くの知識や語彙、人間と大して変わらない行動パターンを組み込み、 画面上で人間と同じように行動させるのが第一段階だ。 そしてその次の段階が画期的なのだ。 ノーフェイスが残した研究の一つ…

顔のない人形 その40

『もちろん、そこにたどり着く事すら楽な作業ではなかった。 その間に我が兄、児島鉄幹は何者かに殺され、偉大なる小伏晴臣氏は未だに行方が分らない。 あの方の事だ、きっとどこかでご存命だと信じたいのだが・・・。 話がそれてしまった。 ・・・さて、動…

顔のない人形 その39

便箋には、乱雑な文字でこう書いてあった・・・。 『 誰かこのノートに気づいてくれるだろうか? これを読んでくれているという事は、私はもうこの世にいないだろう。 これは遺書と思ってもらってもいい、 私の最後の生きた証・・・それを誰かに伝えたいだけ…

顔のない人形 その38

「・・そう言えば美香姉ぇ、 さっきノーフェイスとか何とか言ってたよな、アレ何だ?」 「詳しくは話してる時間がないけど、ここの社長はあるテロ組織の関係者かもしれないってこと。 タケル・・・扉を開けてくれる?」 タケルは目を白黒させたが、確かに今…

顔のない人形 その37

「・・・美香姉ぇ・・・他はいいの?」 美香がメールを打ち終える間際、タケルがおどおどしながら美香に尋ねた。 「他って?」 そう言われてタケルは辺りを見まわす。 自分のしでかしてしまった事で、姉に責められるのを覚悟していたのだ。 ・・・死人が出て…

顔のない人形 その36

「もう・・・いいのよ・・・、ね? あなたのせいじゃない・・・、 あなたのせいじゃないのよ・・・。」 タケルのその四肢から、張り詰めた緊張の糸がほどけていく・・・。 だが、タケルは自分の口から言葉を出す事が出来なかった。 どれぐらい時間が過ぎたの…

顔のない人形 その35

「ぎゃぁぁあああ!!」 第二陣が部屋に飛び込んできた。 ・・・タケルは全く動じない。 新たな獲物の顔面に非情な拳を叩き込み続け、掴んだ頭蓋を壁にぶち当てる! 掌の中で硬いものが砕ける感覚・・・、 容赦ない丸太のような回し蹴りで一気に数人がなぎ倒…

顔のない人形 その34

タケルは今日子の頭を抱いて、床にうずくまったままだ。 勿論そんなことはお構いなしに、操られた者達はタケルと美香に襲いかかる。 「タケルッ!?」 美香は懸命に、木刀で暴徒達を打ち払うが自分を防ぐので精一杯だ。 あっという間にタケルのカラダがうず…