Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

顔のない人形 その17

タケルの怯えた表情に、美香は弟を安心させる。
 「大丈夫、今の段階では危険はないはずよ、ビデオは撮れてるみたいね?
 ・・・ねぇ、気づいてたかどうか知らないけど、時々、テレビ・・・雑音入ったりしない?」
 「え・・・? そういやぁ・・・時々。」
 「録画している間は?」
 「どうだろ? 電話してた時は気づかないけど、・・・一、二回じゃないかな?
 確か最初は、アユの歌の辺りだったと思ったけど・・・。」
美香はそれを聞いてビデオを止め、巻き戻ししてその歌の始まる所で再生し始めた。
画面がアユのアップに切り替わった時、画面がやや歪み、ジ・・・ジジという雑音が聞こえた。
 「・・・ここね?」
美香はそのシーンを止め、何度か再生をしなおす。
タケルも注視するが、何かこの部分に問題があるのだろうか?
そのうち美香は再生から、その部分の早送り・コマ送りを試し始めた。
その時、タケルの目に、画面の異常が飛び込んできた!
コマ送りにした瞬間、画面の歪みの中に、
ほんの一瞬、
気味の悪い映像が見えたのである。
・・・映像そのものが波打っているため、正確な姿は判別できないが、
アユの顔が映っているべきはずなのに、
何か女性の・・・全身像のような・・・、
何か長い金属のようなものを携える・・・髪の長い女性の姿がそこにあったのだ。
顔は判別できない・・・目や口もどうなっているかわからない・・・。
 「・・・美香姉ぇ・・・今の・・・。」
タケルの全身の毛が逆立っていく・・・。
美香もカラダに緊張を走らす。
 「音声は・・・わからないわね・・・、ディスクに焼いてみましょうか?」
美香はパソコンを起動させ、ビデオの一部分をDVDに移し始めた。
タケルは冷や汗を流しながら聞いてみる。
 「・・・今の・・・映像、今日、会ったって言う探偵に教えてもらったっての・・・?」
美香は指先を滑らかに動かしながら、タケルの問いに答える。
 「う・・・ん、このこと自体を教えてもらったわけじゃないのよ、
 その人、すごい情報網を持っててね、電話や通信媒体を使った洗脳、
 またはそれに類する事例が過去にあったか、聞きに行っただけなの・・・。」