シェリーの涙~崩壊への序曲 2
李袞はまさかという表情で首を振った。
「とんでもない! 君が我々に対して、敵意がないとわかればすぐに解放するさ。
ただ、ここは洋上だし、君のカラダも衰弱している・・・。
条件が整うまで休んでいる事だ。」
シェリーはぼうっとしながら、視線を部屋の片隅に向けたまま、独り言をつぶやいた。
「私ぃ、メリーには・・・なれなかったのかぁ・・・。」
「確か・・・人形と共に攫われたお姉さんの謎が知りたいと・・・言ってたね?」
「私・・・そんなことも喋ったんですね・・・?
もう・・・どうでもいいですけど・・・ね。」
李袞はベッドの足元の方にある冷蔵庫を指差す。
「何か口に入れたほうが良さそうだ、・・・飲み物や果物がそこに入っている。
食事がしたければ、内線電話で注文すればいい。
要望は聞けないが味については保証する。
・・・なんなら、今、注文してもいいぞ?」
シェリーは力なく首を振った。
「いえ、・・・今は要りません・・・。」
李袞はしばらく彼女を観察してたが、
落胆している彼女のそばに寄り、一通の大きな封筒を手渡した。
「あの・・・これは・・・?」
「君には尋問の間に、奇妙な事件を聞かされたのでね、何か関係あるかと思ったんだが・・・。」
彼の言葉に不思議そうにシェリーは封筒の中身を取りだした。
・・・写真?
メガネはベッドの脇のテーブルに置いてあった。
すぐに、顔にかけて印刷された写真を見始める。
「・・・!?」
気味が悪い・・・ボロボロの人形・・・顔がなかったり、頭が飛び散ってたり・・・。
シェリーは顔をしかめながら李袞の顔を見上げた。
「何ですか、これは・・・?」
彼は入り口近くのイスにもたれてタバコに火をつけた。
「失礼するよ・・・、
君の尋問では、植物状態のお姉さんが亡くなったのは・・・今から三年前の12月・・・、
と言ってたが間違いないかね?」