Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー 新世界篇 出航4

 
 激しくいきり立つユージンに船長は「とんでもない」という風に両手をあげる。
 「待ってください、ユージン男爵。
 アレが女性に見えますか? いや、女性には違いないのか、な?
 なぁ、メリー・・・。」
メリー!?
 急いでユージンが首を戻すと、
そのうずくまっているはずの女性は顔を起こしていた・・・。
女性・・・?
いや、女性と言うか・・・人間?
あれは人形・・・。
人形が・・・人形が動いたぁ!?
不思議な光景だった・・・。
部屋の入り口には、落ち着いた船長と、
ランプ片手にあまりの衝撃に固まったままのユージン。
そして部屋の奥では、女性のカタチをした人形が、
無機的な動きで立ち上がろうとしていた・・・もちろん無表情のまま。
 「あ、あ、ああ、あああ・・・。」
ユージンは、声は出るが言葉は出ない。
一方、人形はゆっくりとだが、ゴッ、ゴッ、とハイヒールの音を響かせて近づいてくる。
光り輝く銀色の髪、
薔薇の刺繍の黒いドレス、
そしてあまりにか細いその両腕・・・、
さらに何者をも拒むような神秘的な白い顔・・・。
最初、その人形は船長を見ていたようだったが、
彼らの手前まで来ると、若きユージンに向けて、瞳をグルッと動かした。
そしてその口からは・・・小さく、しかしはっきりとした声までもが・・・。

 「こんにちはオブライエン船長、船は港についたのですか? こちらの方は?」
 「こんにちは、メリー、船はまだ海の上だ、こちらはこの船旅の出資者、ユージン男爵だ。」
 「それははじめまして、ユージン男爵、私はメリー・・・今、あなたの前にいるわ・・・。」