Lady メリー 新世界篇
http://1st.geocities.jp/amekazelionmaru/sinsekai/outonalimb-full.mp3 「それは構わないけど・・・昔を思い出せる!? 君は・・・当時のことを・・・いや、フラアやイザベルを知っているのか!?」 メリーは首を傾けて髪を揺らすと、ゆっくりと部屋の扉へ…
「あ、・・・聞いていいかい、メリー? 君はなんだって、この海の向こうの大陸に渡ろうとするんだ?」 最初、彼女は無言だったが、ゆっくりイスから立ち上がりこの小さな部屋を一望する。 ユージンの質問に興味なく、この部屋から出ていくかと思われたが、 …
「そうだな・・・このワインは10年ものだが・・・。」 解説しようとしたユージンだが、メリーはもう一つの壊れかけている腕で、ユージンの口を制する。 「言葉はいりません・・・、うん・・・いい感じみたいね? 酸味も嫌味がなく、芳醇な香りが口の中に拡…
部屋の中は片付けられている。 乱れているのは、 せいぜい、慌てて出かけなければならなかったために、無造作に放り出された寝巻きだけだ。 恥ずかしそうに片付けるユージンにメリーは言葉をかける。 「人形相手に気を遣う必要はないですわよ?」 「あ、ああ…
「あ・・・、あの海賊に何をしたんだ? キ、キミに触ると石のように固まってしまうとでも言うのか?」 メリーは、自分の腕を見ながら興味なさそうに答えた。 「そんなことはないわ・・・、 あなた達には何が起きたかわからないでしょうけど・・・、 いえ、本…
「待ってください、 私も彼女が戦うのは初めて見ました! ・・・確かに、彼女が人を殺す、という事は薄々知ってました・・・。 出航する前の港で、最近、悪名高い犯罪者やギャングが、 次々と鋭利な刃物で殺されていく事件がありまして・・・、 そんな時、私…
仮に、メリーが残りの海賊達に興味を見出していたならば、 彼らはパニックを起こし、 大混乱に陥った後、ほぼ皆殺しの惨劇は避けられなかったかもしれない。 だが、幸運な事に彼女、メリーは力を使い果たしていた。 彼女メリーが船室に戻ろうとするのを確か…
「やめてぇーっ! 助けてぇっ!! オ、オレが悪かったぁ!! もう海賊はやめるっ、だから助けてェ!?」 「・・・もう遅いわ・・・、だんだんと近づく・・・ 死の恐怖をゆっくり味わって死になさい・・・。」 メリーはそう言って、視線を宙に向けたまま痙攣…
この状況を一部始終見守ってたユージン達には、何が起きたのかまるで理解できていない。 メリーが捉えられ、絶体絶命のピンチかと思っていたのに、 全く不可思議な事に、形勢はいつの間にか逆転しているのだ。 海賊の手足が、気味悪く変色してしまっているこ…
「・・・なにぬかしやがる!?」 そうは言っても、頭目の右手首から先には既に感覚がない。 もう、メリーの胸の感触すらつかめない・・・。 メリーは首を曲げ、その頭目の右腕を見下ろした。 「あなたの右手には、もう体温がない・・・、死んじゃったわね・…
「・・・ほぉ~ら、捕まえたぜぇ!?」 頭目は、メリーの頬に擦り寄るような仕草で語りかける。 一方、メリーは何の感情の変化も見せずに、その顎を傾け背後の頭目の顔を見上げる。 互いの顔の距離は10センチも離れていまい、 その気になれば、口づけだっ…
ユージン、オブライエン・・・いや、他の船員や海賊達にしても、 この一騎打ちを固唾を呑んで見守るだけしかできない・・・。 誰も口を開く事が出来ない。 体格では、メリーが圧倒的に押されるはずなのだが、 その遠心力を利用した攻撃は、頭目の豪腕に一歩…
メリーが海賊を切り刻んでる間、 そのいかついカラダの頭目は、甲板によじ登る事に成功していた。 その目には驚愕の色が窺えたが、 その人形が、自分よりも強いなどとは一瞬たりとも考えてはいないだろう。 「おいこら化け物ォ!! オレが相手じゃあっ!!」…
黒い塊が、弾けるように海賊達に襲い掛かる! 死神の鎌ゲリュオンの大きな軌道が、悲鳴と鮮血を生み出していく! 海賊・・・いや船員達も同様だが、 いま、この場に何が起きてるかすら理解できない者がほとんどだ。 その恐ろしい鎌の矛先が、自分に向く事に…
メリーはさらにその白い顔を近づける・・・。 船員の顔にメリーの銀色の髪の房が垂れた。 「・・・可哀想に・・・生まれ育った土地を離れ、こんな海の上で・・・。」 「お、おれを看取ってくれるの かい・・・?」 「心配しなくてもいいわ・・・、あなたがこ…
いきなりメリーは、マストのてっぺんから真ッ逆さまに飛び降りた。 ツバメが滑空するかのように、マストの柱にそって落下する。 途中、柱を登っている海賊が悲鳴をあげる。 メリーがクルッと一回転して着地した0コンマ数秒後、 彼女の背後で、彼ら二人の海…
直接、戦闘行為を行っていない全ての者が、荒げた男の声に反応した、 ユージンやオブライエンでさえも・・・。 もっとも、そのマストに立っている女性が、人形メリーだと理解できたのはユージン、オブライエン、 その二人だけである。 「あ・・・あれはあの…
「ユージン様! あなたは甲板に出る必要はありません! 危険ですよ!?」 「だが、船長は行くつもりなんだろう? わ、私だって貴族の端くれなんだ、 多少の剣の心得はある! これ以上被害を受けるわけにはいかないんだ!」 船長は、部下を殺された怒りと、 …
この時代にレーダーなどない、 朝もやの中から突然、3隻からなる海賊船が洋上に姿を現わした。 オブライエンやユージンの乗る船のクルーたちは、 直ちに持ち場について、海賊船に襲撃への臨戦態勢をとる。 熟睡していたユージンも、突然の騒乱に目を覚まし…
仮にも貴族のユージンが、それで納得できるはずもない。 ・・・だが、人形の言葉遣いから、 彼女のセリフが本気である事も、疑いようがないことだけはわかった。 しぶしぶと、その薄暗い部屋から退出するしかない・・・。 船長は扉を閉める前に、もはや真っ…
ゴトン! いきなりの事で、ユージンの手からランプが落ちる。 オブライエン船長は慌てずに、ゆっくりランプを拾い上げると、 固まったままのポーズの、ユージンとメリーの顔を照らし映した。 のけぞったユージンには、狼狽と恐怖の色がその顔に浮かび上がって…
「彼女に聞いてみたほうが手っ取り早いですよ、 おい、メリー、キミを作ったのは誰だ?」 人形は終止、船長とユージンの会話を黙って聞いていたが、 ここで船長に質問されてようやく会話に参加した。 「・・・さぁ、このカラダを作ったのは誰かだなんて・・…
「しゃべったぁぁ!!」 ようやく喋れたのはユージンのほうだ。 オブライエン船長は、ユージンの反応を見て、予想通りとでもいう風にほくそえんでいる。 人形はあまり反応がない、 当然と言えば当然だが。 ユージンは、一人興奮してわめき散らす。 「ちょっ…
激しくいきり立つユージンに船長は「とんでもない」という風に両手をあげる。 「待ってください、ユージン男爵。 アレが女性に見えますか? いや、女性には違いないのか、な? なぁ、メリー・・・。」 メリー!? 急いでユージンが首を戻すと、 そのうずくま…
揺れる船の中でユージンは驚いた。 「え!? てことは密航者かい!? 困るよ!? 第一、何で僕に報告をしないんだ!?」 「報告をしなかったのは謝りますが、あなたが困る事は何もありませんよ? 何しろ、『アレ』は水も食料も必要ありませんからな。」 「・…
ユージンは、大仰な手振りで不満そうなジェスチャーをとる。 「そりゃあね、安全ならそれに越した事はないけど、 可愛い貴婦人もいないし、舞踏場も楽団もない、 男だらけのバーで、お酒を飲んでもうまくもなんともないよ。」 「ハハッ、お若いですな、さす…
船は大西洋上を航海していた。 船は今で言うスペインの辺りを出航し、 かつて新大陸と呼ばれていた未開の地域に向け、一路、西へと進んでいた。 もともと、この大きな船も、商業船や貿易船とも言いがたい。 何しろ、新大陸には何があるかわからないのだ。 今…