Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー 新世界篇

Lady メリー 新世界篇 最終話

http://1st.geocities.jp/amekazelionmaru/sinsekai/outonalimb-full.mp3 「それは構わないけど・・・昔を思い出せる!? 君は・・・当時のことを・・・いや、フラアやイザベルを知っているのか!?」 メリーは首を傾けて髪を揺らすと、ゆっくりと部屋の扉へ…

Lady メリー新世界篇 出航26

「あ、・・・聞いていいかい、メリー? 君はなんだって、この海の向こうの大陸に渡ろうとするんだ?」 最初、彼女は無言だったが、ゆっくりイスから立ち上がりこの小さな部屋を一望する。 ユージンの質問に興味なく、この部屋から出ていくかと思われたが、 …

Lady メリー 新世界篇 出航25

「そうだな・・・このワインは10年ものだが・・・。」 解説しようとしたユージンだが、メリーはもう一つの壊れかけている腕で、ユージンの口を制する。 「言葉はいりません・・・、うん・・・いい感じみたいね? 酸味も嫌味がなく、芳醇な香りが口の中に拡…

Lady メリー 新世界篇 出航24

部屋の中は片付けられている。 乱れているのは、 せいぜい、慌てて出かけなければならなかったために、無造作に放り出された寝巻きだけだ。 恥ずかしそうに片付けるユージンにメリーは言葉をかける。 「人形相手に気を遣う必要はないですわよ?」 「あ、ああ…

Lady メリー 新世界篇 出航23

「あ・・・、あの海賊に何をしたんだ? キ、キミに触ると石のように固まってしまうとでも言うのか?」 メリーは、自分の腕を見ながら興味なさそうに答えた。 「そんなことはないわ・・・、 あなた達には何が起きたかわからないでしょうけど・・・、 いえ、本…

Lady メリー 新世界篇 出航22

「待ってください、 私も彼女が戦うのは初めて見ました! ・・・確かに、彼女が人を殺す、という事は薄々知ってました・・・。 出航する前の港で、最近、悪名高い犯罪者やギャングが、 次々と鋭利な刃物で殺されていく事件がありまして・・・、 そんな時、私…

Lady メリー 新世界篇 出航21

仮に、メリーが残りの海賊達に興味を見出していたならば、 彼らはパニックを起こし、 大混乱に陥った後、ほぼ皆殺しの惨劇は避けられなかったかもしれない。 だが、幸運な事に彼女、メリーは力を使い果たしていた。 彼女メリーが船室に戻ろうとするのを確か…

Lady メリー 新世界篇 出航20

「やめてぇーっ! 助けてぇっ!! オ、オレが悪かったぁ!! もう海賊はやめるっ、だから助けてェ!?」 「・・・もう遅いわ・・・、だんだんと近づく・・・ 死の恐怖をゆっくり味わって死になさい・・・。」 メリーはそう言って、視線を宙に向けたまま痙攣…

Lady メリー 新世界篇 出航19

この状況を一部始終見守ってたユージン達には、何が起きたのかまるで理解できていない。 メリーが捉えられ、絶体絶命のピンチかと思っていたのに、 全く不可思議な事に、形勢はいつの間にか逆転しているのだ。 海賊の手足が、気味悪く変色してしまっているこ…

Lady メリー 新世界篇 出航18

「・・・なにぬかしやがる!?」 そうは言っても、頭目の右手首から先には既に感覚がない。 もう、メリーの胸の感触すらつかめない・・・。 メリーは首を曲げ、その頭目の右腕を見下ろした。 「あなたの右手には、もう体温がない・・・、死んじゃったわね・…

Lady メリー 新世界篇 出航17

「・・・ほぉ~ら、捕まえたぜぇ!?」 頭目は、メリーの頬に擦り寄るような仕草で語りかける。 一方、メリーは何の感情の変化も見せずに、その顎を傾け背後の頭目の顔を見上げる。 互いの顔の距離は10センチも離れていまい、 その気になれば、口づけだっ…

Lady メリー 新世界篇 出航16

ユージン、オブライエン・・・いや、他の船員や海賊達にしても、 この一騎打ちを固唾を呑んで見守るだけしかできない・・・。 誰も口を開く事が出来ない。 体格では、メリーが圧倒的に押されるはずなのだが、 その遠心力を利用した攻撃は、頭目の豪腕に一歩…

Lady メリー 新世界篇 出航15

メリーが海賊を切り刻んでる間、 そのいかついカラダの頭目は、甲板によじ登る事に成功していた。 その目には驚愕の色が窺えたが、 その人形が、自分よりも強いなどとは一瞬たりとも考えてはいないだろう。 「おいこら化け物ォ!! オレが相手じゃあっ!!」…

Lady メリー 新世界篇 出航14

黒い塊が、弾けるように海賊達に襲い掛かる! 死神の鎌ゲリュオンの大きな軌道が、悲鳴と鮮血を生み出していく! 海賊・・・いや船員達も同様だが、 いま、この場に何が起きてるかすら理解できない者がほとんどだ。 その恐ろしい鎌の矛先が、自分に向く事に…

Lady メリー 新世界篇 出航13

メリーはさらにその白い顔を近づける・・・。 船員の顔にメリーの銀色の髪の房が垂れた。 「・・・可哀想に・・・生まれ育った土地を離れ、こんな海の上で・・・。」 「お、おれを看取ってくれるの かい・・・?」 「心配しなくてもいいわ・・・、あなたがこ…

Lady メリー 新世界篇 出航12

いきなりメリーは、マストのてっぺんから真ッ逆さまに飛び降りた。 ツバメが滑空するかのように、マストの柱にそって落下する。 途中、柱を登っている海賊が悲鳴をあげる。 メリーがクルッと一回転して着地した0コンマ数秒後、 彼女の背後で、彼ら二人の海…

Lady メリー 新世界篇 出航11

直接、戦闘行為を行っていない全ての者が、荒げた男の声に反応した、 ユージンやオブライエンでさえも・・・。 もっとも、そのマストに立っている女性が、人形メリーだと理解できたのはユージン、オブライエン、 その二人だけである。 「あ・・・あれはあの…

Lady メリー 新世界篇 出航10

「ユージン様! あなたは甲板に出る必要はありません! 危険ですよ!?」 「だが、船長は行くつもりなんだろう? わ、私だって貴族の端くれなんだ、 多少の剣の心得はある! これ以上被害を受けるわけにはいかないんだ!」 船長は、部下を殺された怒りと、 …

Lady メリー 新世界篇 出航9

この時代にレーダーなどない、 朝もやの中から突然、3隻からなる海賊船が洋上に姿を現わした。 オブライエンやユージンの乗る船のクルーたちは、 直ちに持ち場について、海賊船に襲撃への臨戦態勢をとる。 熟睡していたユージンも、突然の騒乱に目を覚まし…

Lady メリー 新世界篇 出航8

仮にも貴族のユージンが、それで納得できるはずもない。 ・・・だが、人形の言葉遣いから、 彼女のセリフが本気である事も、疑いようがないことだけはわかった。 しぶしぶと、その薄暗い部屋から退出するしかない・・・。 船長は扉を閉める前に、もはや真っ…

Lady メリー 新世界篇 出航7

ゴトン! いきなりの事で、ユージンの手からランプが落ちる。 オブライエン船長は慌てずに、ゆっくりランプを拾い上げると、 固まったままのポーズの、ユージンとメリーの顔を照らし映した。 のけぞったユージンには、狼狽と恐怖の色がその顔に浮かび上がって…

Lady メリー 新世界篇 出航6

「彼女に聞いてみたほうが手っ取り早いですよ、 おい、メリー、キミを作ったのは誰だ?」 人形は終止、船長とユージンの会話を黙って聞いていたが、 ここで船長に質問されてようやく会話に参加した。 「・・・さぁ、このカラダを作ったのは誰かだなんて・・…

Lady メリー 新世界篇 出航5

「しゃべったぁぁ!!」 ようやく喋れたのはユージンのほうだ。 オブライエン船長は、ユージンの反応を見て、予想通りとでもいう風にほくそえんでいる。 人形はあまり反応がない、 当然と言えば当然だが。 ユージンは、一人興奮してわめき散らす。 「ちょっ…

Lady メリー 新世界篇 出航4

激しくいきり立つユージンに船長は「とんでもない」という風に両手をあげる。 「待ってください、ユージン男爵。 アレが女性に見えますか? いや、女性には違いないのか、な? なぁ、メリー・・・。」 メリー!? 急いでユージンが首を戻すと、 そのうずくま…

Lady メリー新世界篇 出航3

揺れる船の中でユージンは驚いた。 「え!? てことは密航者かい!? 困るよ!? 第一、何で僕に報告をしないんだ!?」 「報告をしなかったのは謝りますが、あなたが困る事は何もありませんよ? 何しろ、『アレ』は水も食料も必要ありませんからな。」 「・…

Lady メリー 新世界篇 出航2

ユージンは、大仰な手振りで不満そうなジェスチャーをとる。 「そりゃあね、安全ならそれに越した事はないけど、 可愛い貴婦人もいないし、舞踏場も楽団もない、 男だらけのバーで、お酒を飲んでもうまくもなんともないよ。」 「ハハッ、お若いですな、さす…

Lady メリー 新世界篇 出航1

船は大西洋上を航海していた。 船は今で言うスペインの辺りを出航し、 かつて新大陸と呼ばれていた未開の地域に向け、一路、西へと進んでいた。 もともと、この大きな船も、商業船や貿易船とも言いがたい。 何しろ、新大陸には何があるかわからないのだ。 今…