Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー 新世界篇 出航7

 
 ゴトン!

いきなりの事で、ユージンの手からランプが落ちる。
オブライエン船長は慌てずに、ゆっくりランプを拾い上げると、
固まったままのポーズの、ユージンとメリーの顔を照らし映した。
のけぞったユージンには、狼狽と恐怖の色がその顔に浮かび上がっている・・・、
一方、表情のないメリーには、その心のうちを顔に出す術があるはずもないが、
上目遣いに睨んだそのナイフのような視線が、全てを物語っている・・・。
 気安く触ろうとするな・・・!
そしてメリーは、ゆっくりと、真っ直ぐに伸ばした右腕を引っ込める。
 「・・・ユージン様・・・でしたね?
 私はただの人形ですが・・・、
 私は、召使でも奴隷女でも・・・ましてや玩具でもありません。
 私には、明確な意志と目的と・・・そして人格があります。
 この船に乗せて貰った代わりに、私にできる事があるのなら、多少は協力いたしますが、
 貴方の所有物になるわけには参りません・・・!」
ユージンの顔に汗が垂れてきた・・・。
 どうなってるんだ? おれの言う事を聞けないってのか!?
 「き、きさま私を誰だと・・・!」
言いかけるユージンをメリーが制する。
 「ご覧の通り、私は人形です。
 あなたがあなたの国で、如何なる権力をお持ちか存じませんが、
 私には権力も財力もいかなる力にも拘束されません。
 ・・・ただ、だからと言って、私の都合で周りを騒がすのも本意ではありません。
 それでこのような、人目のつかないところでじっとしていたのです。
 ですので、極力私に構わないでいただけますか?
 もし・・・それが叶わぬなら・・・!」
そこで、船長が割って入った、
・・・これ以上、事態を険悪にさせるわけにはいかないと判断したのだろう。
 「ユージン様、最初に言ったでしょう、不用意な発言は慎んでいただくようにと・・・。
 これ以後、彼女と接する機会がないわけではありません、今夜は一まず・・・。」