Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー 新世界篇 出航8

 
 仮にも貴族のユージンが、それで納得できるはずもない。
・・・だが、人形の言葉遣いから、
彼女のセリフが本気である事も、疑いようがないことだけはわかった。
しぶしぶと、その薄暗い部屋から退出するしかない・・・。
船長は扉を閉める前に、もはや真っ暗になりかかっている船室で、
一人立ち尽くす暗い姿の人形に声をかけた。
 「邪魔をしたな、メリー、また何かあったら声をかけるかもしれないが・・・。」
 「ええ、どうぞ? 私の方には気を遣う必要はありませんわ、
 おやすみなさい、船長。
 ・・・そしてユージン様?」
 「ああ、おやすみ、メリー。」
そういって一度、船長は、たじろぐユージンに目配せをしてから扉を閉じた。
ユージンは挨拶どころではなかったらしい、プライドを酷く傷つけられたせいだろう。
やむなく、帰りしな、船長に食って掛かる。
 「どういうことだよ? なんだいあの無礼な人形は!?」
身分は勿論ユージンの方が上だが、年齢も人生経験も船長が上回る。
若きユージンをなだめることなど造作もない。
 「これは失礼を・・・・、ですが面白いものを見れたでしょう?
 それに、ユージン様は感じませんでしたか?
 人形メリーはいかなる権力も気にしないと言ってましたが、
 あの『人形』そのものに高貴な雰囲気が・・・。
 まるで貴族のスタイルを身につけているような・・・。」
 「えっ!?」
そう言われてユージンは後ろを振り返った・・・、
そう言えばあの物腰は・・・。
しばらくして、二人はそれぞれ自分の部屋に戻った・・・。

その夜・・・いや、空が白み始める薄暗い船上の甲板・・・。
交代で寝ずの番をしていた船員が叫び声をあげる。
 「か、か・・・海賊だぁ、海賊が現われたぞぉぉーッ!!」