Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー 新世界篇 出航9

 
 この時代にレーダーなどない、
朝もやの中から突然、3隻からなる海賊船が洋上に姿を現わした。
オブライエンやユージンの乗る船のクルーたちは、
直ちに持ち場について、海賊船に襲撃への臨戦態勢をとる。
熟睡していたユージンも、突然の騒乱に目を覚ました。
 「・・・え? おい、何事だ・・・!?」
寝巻き姿で廊下に出ると、雇い主の自分を無視して船員達が慌ただしく駆け抜けていく。
・・・まさかこれは・・・。
ユージンは着替えて操舵室に向かう。
既にオブライエンは厳しい顔をして、部屋のガラス窓から甲板の騒乱を見下ろしていた・・・。
 「・・・お目覚めですか、ユージン様・・・。」
 「船長! まさか海賊に襲われてるのか!? ・・・一体!?」
慌ててユージンも窓の下に目をやると、
既に縄梯子をひっかけた海賊船から、
大勢のならず者達が乗り込んで、この船のクルー達と交戦している。
訓練されたクルーたちもよく戦っているが、圧倒的に海賊の兵数のほうが多い、
次第に押されていき、既に3人もの犠牲者が甲板に横たわっている。
 「・・・あれは、マックにブレポワ・・・そしてワイズマン・・・クソっ! 
 まだ目的地にも着いてないのに・・・!」
日ごろ温厚なオブライエンも、部下を殺されて激しい怒りの表情を浮かべている。
その激情に戸惑うユージンだったが、船員達と関わりを持たないユージンにとっては、
身の安全のほうが最大の心配事である。
 「オ、オ、オブライエン船長・・・! ここはだ、大丈夫なんですか!?」
オブライエンはユージンの方を向かずに、絞るように声を吐き出す・・・。
 「・・・生きるか死ぬかです・・・。
 例え、降伏しても、こんな所で食料や燃料を奪われては、生き残る術はありません。
 あなた様の身の安全を図りたいとは思いますが、最悪の事態を覚悟してください・・・!」
 「そ、そんなぁ!?」

一方、甲板の上での戦闘を見下ろしている人物が、マストのてっぺんにもう一人存在していた・・・。
荒ぶる海風に銀色の髪をなびかせ、薔薇の刺繍のドレスを纏ったモノトーンの人形が・・・。