Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリー 新世界篇 出航10

 
 「ユージン様! あなたは甲板に出る必要はありません! 危険ですよ!?」
 「だが、船長は行くつもりなんだろう?
 わ、私だって貴族の端くれなんだ、
 多少の剣の心得はある!
 これ以上被害を受けるわけにはいかないんだ!」
船長は、部下を殺された怒りと、
ユージンを守る責任とのどちらを優先するかの決断を迫られていた。
気が弱いくせに、変な所で大胆・・・というか、プライドの高いユージンの扱いは大変だ。
どの道、甲板での戦闘はこちらにとってはなはだ不利である。
なにしろ後から後から海賊が乗り込んでくるのだ。
少々、敵をやっつけても戦況に変化はない。
むしろ、敵兵の数はますます増えていく。
せっかくの大砲も、敵に乗船されてしまった今ではなんの意味もない。
結局、船長は、ユージンを連れて甲板に出て行くことを決めた。
護衛する事はできないが、ユージン自身が自分の身は自分で守ると言い出したからには、
少しでも戦力が欲しいのは事実だったからだ。
 ・・・さて、二人がデッキに到着した時には既に四人目の犠牲者が出ていた。
新手の海賊が、二人の姿を見つけて襲い掛かるが、船長の手槍が海賊の胸を突き刺す。
いざとなれば容赦はしない。
片や、心では分っていても、突然の命の奪い合いに、
ユージンは現実を理解しようとするだけで精一杯だ。
どっかの船室に閉じこもっている方がマシな気がするが・・・。

海賊の中には、狭い甲板の為に戦闘に参加できないものもいる。
また、船内に侵入しようとするものもいるが、
既にオブライエンとユージンが入り口を固めたために、彼らの隙を窺うしかない。
ところが新たに縄梯子を伝ってきた新手が、
セピア調の空、船、海の景色の中に、
マストの上で一人佇んでいる女性に気づいた・・・。
この高低差と朝もやでは、その姿は「人形」だと認識できるはずもない・・・。
 「おい、オメーら!! 帆の上に立ってるご婦人を見ろよぉ!?」