Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

緒沢タケル 伝授1

 
 日曜日になった。
・・・あの事件は、その後、
新聞やテレビでニュースとしてとりあげられたが、普通の火災事故として扱われた。
薬品精製過程における管理ミス、及び機材の老朽化が原因だそうだ。
タケルは「ほっ」と肩の力を抜いたが、反面、そんなんでいいのか? とも思ってる。
まぁ・・・死人は「いなかった」とされていることからも、
捜査は、真相には辿り着けないであろう事は想像に難くない。

タケルは無気力になっていた。
やる気が湧いてこない・・・。
まるでこないだの事が夢のようだ・・・。
10万円は確かに日浦からもらった。
手元に万札が10枚ある。
だが、嬉しいとか、何に使おうとか、そういう気持ちすら湧いてこないのだ。

 「?」
家の前に車が止まったようだ、エンジン音が消えるのが部屋の下から聞こえてくる。
ふと、窓を開けて下を見下ろすと、白い乗用車が緒沢家の塀に沿って止められていた。
少しすると、車の中から長身の男が出てくる、
・・・もちろん長身と言ってもタケルには及ばない。
せいぜい175~178cmというところか。

 あの人は・・・そうだ! 今日行く事になってたっけ、
 剣道大学選手権全国大会優勝者、白鳥亮・・・さんだ。

出かける事を思い出したタケルは急いで身支度をする。
そうこうしてる内に、家のチャイムが鳴らされる。
隣の部屋から、美香が先に反応して下に降りていく。
彼女は準備万端だったのだろう、
何の慌てる事も、焦りもないようだ。
しばらくすると、美香が階段を登って来て、タケルの部屋を叩く。