Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

緒沢タケル 秘密工場へ(最終話)

 
 だが、動物達は出てこない・・・。

 「日浦さん、・・・やっぱりあいつら・・・。」
 「恐らく、煙にやられたんだろう、
 あの・・・檻に入れられた人間達も一緒に・・・、
 証拠は・・・全て炎の中ってことだな・・・。」
 「撮った画像やデータは?」
 「勿論あるが、もう必要ないさ・・・。
 この企業もバカじゃない、
 少なくとも、日本でこれだけの騒ぎが起きれば、
 この国で違法な研究をしようとは思わないだろう・・・。」
 「でもそれって・・・、他の国で同じような事が続けられるってことですよね?」
 「・・・そうだ、人間達の需要がある限りね・・・。」

それ以上、タケルは質問を続けられなかった。
・・・ただ、力を込めた拳を握り締めるだけだった。
 それを黙って見ている日浦だったが、
その時、彼のカラダは少し違和感を感じていた。

 揺れている・・・?
爆発による振動ではない・・・、
地面が断続的に揺れている・・・地震
タケルは揺れに気づいてはなさそうだった・・・。
彼の瞳は、研究所からの、真っ赤に揺れる炎を映し出しているだけだったのだ・・・。

そして・・・彼らが脱出する前、檻に閉じ込められていた人間の一人が、
この施設から逃げ出す事に成功していた。
彼に関するお話は、別のタイトルの物語で語られている・・・。
いずれ、タケルが後始末することになるのだが・・・。

この後、事件はさらなる悲劇を迎えていく事となる、
日浦も、タケルもまだその予感すら感じることもなく・・・。

   (つづく)