Lady メリーと異教の騎士17
ズビッ。
「そんで・・・殺人鬼を追うのはわかった。
だが、その大元はなんなんだ? 人間じゃないとかなんとか言ってなかったか?」
メリーは人間の女性がそう振舞うように、
ソファに座って、その細く美しい足を組んでいる。
人形とは言え、その関節はまさしく人間の構造を精密に再現していた。
「悪霊よ・・・。」
またもやハロルドの背中に冷たいものが・・・。
普通なら「ハンッ・・・!」とでもバカにしたいところだが、
目の前にいる動く人形の存在自体が、既に有り得ない現実なため、
もう、その現実離れした単語も受け入れるしかない。
「あ、悪霊・・・だとぉ?」
「そう、元は大昔に生きていた人間・・・。
死んでからなおも、その常軌を逸した憎しみをこの世に留まらせているみたいなの・・・。」
とりあえず、ハロルドは落ち着くためにタバコを手にした。
・・・少し指元が震えている。
「・・・ああ、アンタ煙は苦手か?」
彼女は薄く首を傾けただけだ。
・・・つまんねぇこと聞いたかな?
だが、メリーはその後、左右を見回してから一言だけ、ハロルドに答える。
「火事にだけは気をつけたほうがいいわ・・・。」
ハロルドはタバコに火をつけ、思いっきりニコチンを灰に流し込んだ。
「・・・気をつけるぜ・・・。」