Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリーと異教の騎士19

 
タバコを吸いながら会話をしていたハロルドは、一度灰皿にタバコの火を押し付ける。
いつもよりペースが速そうだ。
 「・・・アンタは何でその悪霊を狙うんだ?」
メリーはしばらくうつむいていた。
なにぶん、顔の表情が一切変わらないので、
ハロルドにはメリーの心情を読み取る事が出来ない。
もちろん、感情があればの話しなのだが・・・。
ようやくメリーは顔を起こし、ハロルドの顔をそのグレーの瞳で見つめた。

 「娘が感染したの・・・。」
 「娘・・・? 感染!?」
 「リジー・ボーデンの巨大な悪意は伝染するの・・・。
 勿論、誰にでもというわけではないけれど、
 一度、心の周波数が同調してしまうと、
 その深い底なし沼に足を絡めとられでもするかのようにズブズブと・・・。」
 「娘って・・・人間の娘・・・かい? 今・・・!?」
 「・・・私の娘、麻衣は、感染した結果、
 自分の父親と・・・私の元のカラダを滅多刺しにしたわ・・・。
 いま、病院に閉じ込められているみたい・・・。」

もともと、百合子は人間だった時も、
自分の感情を表に出す性格ではない。
故に、普段からゆっくりと会話をするタイプである。
そして、今も、感情をもたないはずの人形のボディに溶け込み、
他人事でもあるかのような、大人しい喋り方を続けている。
だがハロルドにしてみれば、その感情が見えないからこそ、
余計に人形の隠された心情を想像せざるを得ない。
・・・彼も男なのだ。
騎士団の正式なメンバーではないが、人情味溢れる彼は、
一度、火がつくとどこまでも突っ走るタイプだ。
面倒ごとは真っ平ゴメンだが、義理や人情、仁義にはめっぽう弱い。
射撃の腕のみならず、そこを買われて、彼は騎士団にスカウトされたのだ。