Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリーと異教の騎士20

 
 「・・・そうだよな、家族だっているんだよな?
 娘さんを救うために・・・。
 旦那さんは・・・それで?」
 「集中治療室に・・・一命は取り留めたけど、
 まだ意識は戻らない・・・。
 私には彼を救うことも出来ない・・・。」
ハロルドの方がつらそうな顔をしている。
他人の苦しみや悲しみをも理解できる男なのだ・・・。
 「アンタはそのために、そんなカラダになってまでも、こんなとこまで奔走してるのか。
 ・・・悪かったな、化け物とか呼んじまって・・・。」
逆に百合子はそっちのほうこそ気にならない。
首をかしげて不思議なフリをする。
 「? 別にそんな事はどうでもいいわ。
 それに同情してくれてるみたいだけど、
 ・・・このボディでは感情が生まれないの。
 私にとってはあなたが全力で協力してくれるなら、ありがたいということだけよ?」
何故か、その言葉にハロルドはいきり立つ。
 「感情が生まれないぃ?
 矛盾してねーかぁ?
 ・・・じゃあ、なんで家族を助けようなんて思うんだよ!?
 なんで、つらそうに『夫を救うことも出来ない』なんてセリフが出てくんだよ!?」
彼女は興味深そうにハロルドの顔を見上げる。
 なんで、この男はこんなに興奮してるのだろう?
 まるで我が事のように・・・。
ただ、ハロルドの疑問の答えは、今の百合子にとっても確かによく分らない。
彼女は再びうつむいて考える。

 「・・・私には、意思がある。
 人格もある・・・。
 それぞれの材料や記憶を元に、複雑な思考も出来るわ・・・。
 人間だった時と同じように・・・。」