Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリーと異教の騎士21

 
 元々、人形になったからと言って、これまでの百合子と大きく変わることはない。
それは、リーリトという特殊な遺伝子の元に生まれついた事にも依るが、
転生後の人格は、
人形メリーのボディに転生した時の精神状態が、強くその後の性格に反映されてしまうのだ。
憎悪や苦痛に囚われていたマリーやエミリーと、大きく違うのはその点だ。
百合子がメリーのボディに転生することを決意した時、
やはり彼女は「家族を守る事」だけを考えていたのだ。
マリーやエミリーを救うことなどは確かにどうでも良かったのだが・・・。
実際、もし、感情をそのまま残していたとしたら、
今、愛する夫や娘と仲良く暮らしている・・・しかもそれは自分のカラダ・・・
マリー達に、嫉妬の念を覚えていたかもしれない。
だから・・・、理論的に考えても、この形で何も不満はない。
家族にあえなくても、麻衣とはテレパシーで会話も出来るのだ。
それがいまや・・・。

メリー・・・百合子はしばらく考えていたが、
ふっと顔を起こし、その冷たいグレーの瞳をハロルドに向ける。
 「・・・あなたの疑問は私にとっても難しい質問だわ・・・。
 私は当然のことのように行動を起こしているだけ・・・。
 家族を守るのは当たり前の行動なのだとね・・・。」
それを聞いて・・・いや、聞かないまでも、
長いこと考え込んでたメリーを見ていて、
ハロルドも何に対してイラついてたのか、自分も分らなくなってしまった。
それに、彼女の解いた答えに不満もなかったのだ。
むしろ今では罪悪感すら覚える。
 「イヤ、くだらねぇ質問をしちまった、許してくれ・・・。」
 「いいえ、私にとっても興味深い問いだったわ、
 でも・・・考えたんだけど、アリとか蜂も、
 感情なくても守るべき物があるわよね?
 やっぱり、自然な事なのじゃないかしら?」