Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリーと異教の騎士26

 
 通常の社交辞令の中からも、ハロルドは依頼者の観察を怠らない。
昨夜の電話では「非合法な内容の依頼」とほめのかしていたが、
今のところ、この中年女性からはそんな犯罪の匂いはうかがえない。
・・・安物の香水と、少し垂れたグラマラスなバスト、
スーパーでまとめ買いしたような、
まぁおとなしめだが、あまりセンスのよろしくない服装に身を包んでる。
・・・このH.S.Pディテクティブオフィスも、
そんな高い依頼料を払ってくれる客を見込んでるわけでもないのだが。

 簡単な挨拶を済ませた後、書類を用意しながらハロルドは切り出した。
 「それで・・・お電話では、何かあまり公にできなさそうなお話と伺いましたが・・・?」
モーリンは、どう自分の依頼を話していいか自信なさげに、
つっかえながら喋り始めた・・・。
 「あ、あの、そうですね・・・、
 私の息子のことなんですが、し、身辺調査っていうんですか?
 ・・・お願いしたいのはそのことなんです・・・。」
 「身辺調査? 勿論、承ってますよ?
 息子さんはおいくつで?」
 「は、はい。ハイスクールの二年生なのですが、最近、どうも様子が変なんです・・・。」
 「ほう・・・、通常の思春期とか反抗期とかじゃないんですか?」
 「違います! ・・・それは多感な時期だとは思うんですが・・・、
 急に人が変わったみたいに・・・突然、意味不明の言動が増えたり、
 私達の目を避けるように行動したり・・・!」
身辺調査など簡単な仕事だ・・・。
というか、本来この程度の内容なら探偵を雇うほどの物でもないだろう・・・?
親として子供の心配はあるだろうが、無駄に金を使うよりか・・・
いや、大事な収入源だ。
 「ああ、・・・ズビッ、・・・失礼!
 えー、失礼ですが、調査だけなら何も・・・
 昨日電話で仰ってたような、法に触れるようなことは何もないと思いますが?」