Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

前兆

 
  8.

 「あら、ジェリコ内務卿? 」
ジェリコは深々と頭を下げる・・・。
 「これはフラア様、今日もお美しいですな? 
 ・・・しかし、あまりその美しさをふりまくと、いろんな虫達がまとわり付いてきますゆえ、
 くれぐれもご自重なさいますよう・・・。」
 「あっははは、アンドリューのこと?
 大丈夫ですよー? ご心配なく!」

一見、気難しそうに見えるが、根は優しいおじさんだ。
彼の前では、比較的フラアは元の自分をさらけ出す。
 「それより、奥様はお元気? リウマチの症状が出てきたって仰ってたけど・・・。」
 「これはもったいない、愚妻の心配までしていただいて、
 今は病院で処方してもらった薬がよく利くそうです。
 またフラア様に会えるのを楽しみにしております。
 ・・・何しろ我ら夫婦には子供がおりませんでな、
 おっと! 私がお引止めいたしては、仕方ないですな?
 それでは私も失礼いたします。」
 「ええ、ジェリコ内務卿、奥様にもよろしく・・・。」

・・・ふう、アンドリューもジェリコも比較的、フラアによく接してくれるほうだ。
もちろん、国王始め、他の貴族もちやほやしてくれるが、
自分との間に見えない壁を一枚置いて接している。
自分を恐れているのか、警戒しているのか、はたまた嘲っているのか定かでないが、
やっぱり宮廷は居心地のいい場所ではない。
今は、悩むヒマがないほど忙しいから何とかやっていけるのだ。

だが、先の大戦以来、「神の娘」とまで言われるようになってしまったフラアには、
次から次へと事件が降りかかる。
・・・今もまた、彼女に襲い掛かる悪夢の、前兆が始まろうとしていた・・・。
幽霊騒ぎなど自分には関係ないと思っていたのに。