Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリーと異教の騎士35

 
ハロルドは半べそかきながら、
無理矢理、ハンバーガーとポテトを胃の中に流し込んでいた。
 『そんなに大事な帽子なの?』
食料を買ってる最中、一度電話は中断されたが、
折角、話し相手がいるのに侘しいと、ハロルドの要望で通話が再開された。

人間のままの百合子であれば、「何を女々しい」と、電話をそっけなく拒否したかもしれないが、
逆に感情をなくした人形の身であるからこそ、
ハロルドの要望に応えることができたのかもしれない。
 「・・・ムガ、ユーズドショップで見かけた年代物だ・・・、
 これだけ使いこんだ後にも関わらず、型崩れせずこのラインを保ち続けるなんて、
 奇跡だぞ!?
 滅多に手に入るもんじゃねぇ・・・、チクショウ。」
 『・・・よく分らない心理ね・・・。
 今は、薬品で使い古し感はいくらでも出せるでしょう?』
 「わかってねーな! 
 そーゆーイカサマ臭いのがダメなんだ!
 何十年も使いこんである!
 ・・・そーゆー事実というか、実績が信頼を生むのさ!」
 『男ってどうして、そういうのにこだわるのかしらね・・・?』
ハロルドはコーラを飲み干してから吐き捨てるように言う。
 「あんたの旦那さんもそうか?」
 『・・・・・・。』
やべ・・・、あまり触れない方がよかったか?
だが、もう遅い・・・。
 「あ・・・すまねぇ、無理に答えなくていいぞ?」
 『あの人は・・・あまりファッションにはこだわらなかったけど、
 結婚する前は、私には赤が似合うって、セーターくれたわね・・・。』
 「ほう・・・、人間のときのアンタも美人なんだろな?」
 『お世辞は不要よ・・・、
 でも、その後、私が時々赤い服やアクセサリーをつけ始めてから、
 あの人、私が赤が好きなんだと思いはじめちゃったみたい。
 誰のために赤を集め始めたんだか・・・。
 自分が言った言葉も忘れちゃったのかしらね?』