Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリーと異教の騎士 37

 
ハロルドは笑いがこみ上げてきた。
きっと、この女性の家庭は微笑ましい家庭だったのだろう・・・。
できるなら、もう一度、その幸せな家庭を取り戻してやりたいが・・・。
 「オレはわかんねーが、
 ・・・家族ってのはいいもんなんだろうな?」
 『家族?
 あなたはご両親とか、ご兄弟はいないの?』
 「ハ、オレはみなしごってヤツさ、
 親の顔なんか知らねー、
 一緒に育てられた兄弟みたいなんはいるけどな、
 それも、いわゆる子供のいうような遊び仲間じゃねーしな、
 ま、生涯、一人モンよ、
 だからこんな商売で、ニューヨークの隅っこでフラフラしてるのさ。」

人形のボディにハロルドの感情が流れ込んできた。
自嘲的なセリフではあったが、
それは「郷愁」というものに近いようだ。
 メリーは一度口を開きかけたが、留まった・・・。
今の目的はこの男を知ることではない。
 『ハロルド・・・申し訳ないけど、そろそろ・・・。』
 「ああ、そうだな・・・、腹も落ち着いたし行くとするかぁ・・・。」
 『ええ、・・・じゃあ、電話を切るわね?
 また、なにかあったら鳴らすから、
 慌てずゆっくり対応してね・・・。』
 「了解・・・!」

そういって二人は電話を切る。
車のエンジンをつけながら、ふとハロルドに疑問が生じた・・・。
思い出したように、首を後ろのトランクに向けて、長いまつ毛を何度かパチパチさせる。
 そういや、この人形・・・電話、どこに持ってやがんだ?
 ・・・聞くのは・・・次回にするか。