Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリーと異教の騎士 44

 
そして時刻は夜になった。
メリーが侵入したスーパーマーケットも、閉店を迎え、
残業するワーカーたちも全て引き上げた。
もちろん、メリーもずっとトイレに篭っていたわけではない。
人目に気づかれないように、移動を繰り返し、
いつの間にやら衣料品売り場のストックルームに潜り込んでいたのである。
マネキンモードになってしまえば、
瞬きはおろか、1ミリもカラダを動かさない事も可能なので、
不振がられる心配は全くない。
・・・もっともワーカーたちもバカではないだろうし、
突然職場に現われた、一体のマネキンの存在自体が怪しまれる事は十分考えられる。
なのでメリーは、適当にストックルームの死角になりそうなところに、
ゴテッと無造作に横たわっていた。

店内の照明が非常灯のみになったのを確認すると、
まるで、ネズミが行動を開始するかのように、メリーは活動を始めた。
・・・もう人の気配はない。
メリーの能力なのか百合子本来の能力なのか、もはや区別は困難だが、
店の構造やマップが彼女の脳内に再現されていた。
どこの方角へ行き、どこから外に出ればいいかは、
自ら問いかける必要もない。
澱みのない動作でストックルームの施錠を内側から外し、
非常口から外に出る。
・・・途中、申し訳程度のセキュリティシステムが作動するが、
警備員が駆けつける頃には、既にメリーはこの建物を立ち去った後だ。
お騒がせしたこのスーパーマーケットには悪いけれど、
実際、メリーにはそんな事を気にするはずもない・・・。

・・・外は小雨がパラついていた。
人形の肌や衣服を湿らせていく・・・。
メリーは、自らの感知能力で、「何らかの異常な想念」を捉える事はできないかと試みていた。
「死神の鎌」があれば、その能力は増幅されるが、このままでも十分かとは思ったのだけど・・・。
・・・特に何も感じられない・・・。
街に住まう人々の雑然とした想念が、ノイズのように集まってくるだけだ。
ジー・ボーデンのホテルの場所は分っている。
一応念のために、そこまで行って確認するべきだろう・・・。