Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリーと異教の騎士 45

 
一方その時刻、ハロルドは自分のアパートメントに戻ってビールをかっくらっていた。
テレビをつけてみる。
海外のニュースには、比較的他人事のアメリカでも、
今度の一連の国際テロの続報は、さすがにバンバン流れてくる。
どこどこの軍事施設が破壊されただの、都市機能が麻痺状態に陥っただのと、
特に、ハロルドは首謀者達と全く無関係ではないために、他人事では済ませられない。
アメリカにも勿論、騎士団支部はあるが、
地上最強の軍事力と組織力を誇る合衆国で行動を起こすには、まだまだ時間が必要であった。
・・・というよりも、北米支部に課せられた任務は、
アメリカがヨーロッパに援軍を派遣しようと決定された場合、
あらゆる手段を使って、その行為を妨害することにある。
それは物理的・軍事的な意味合いのみに留まらず、政治的・世論的な操作をも含んでの話だ。

・・・どちらにしろ、
正規メンバーではないハロルドにはそこまで関知するつもりはない。
むしろ、なんとかこの愚かな行為を止める事はできないのか、と考えてはみるものの、
既に多くの無辜の民が犠牲になってるこの状況で、
いったい、どんな解決策が見出せると言うのだろうか?
・・・自分に、そこまでの才覚や甲斐性など持ってないことは、
ハロルド自身が一番よくわかっている・・・。
自分一人で生き抜くのだけでやっとだというのに・・・。

その時、珍しくパソコンにつないである端末のコールサインが光った。
・・・この端末は・・・
ハロルドが本来、所属してるはずの組織・・・多国籍軍需産業デミゴッドの・・・専用端末・・・。
 「・・・珍しいな・・・、今のオレに・・・。
 まさか、今度の騎士団に関しての厄介ごとじゃねーだろうな・・・?
 これ以上、無給の仕事やめてくれよ・・・?」
缶ビール片手に、モニタ上のキーをクリックすると、画面いっぱいに、
大陸顔の鼻筋の通った若い女性が映し出された。
 「よーお? アーリアちゃん久しぶりだなあ?」
 『・・・久しぶりね、ハロルド・・・、画面の端に缶ビール映ってるわよ?』
 「こっちは晩酌タイムだ、気にすんなよ、
 でかい面のアムールや、シュメールの坊やは元気かぁ?」
 『・・・アムールの減らず口はあなた以上よ、シュメールは・・・相変わらずだわ。』
 「オレに連絡って事は・・・『ボス』直々に指令でも出たのか?」