Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

緒沢タケル第四章その41

 
しばらく会話に参加してなかった白鳥が、目を剥いた。
 「えっ? 待ってくださいっ、
 今までのケンカ越しのやりとりは全部、やらせ・・・?」
その一言に、一番驚いたのはタケルだ。
 「ええっ!?」
マリアとサルペドンは・・・
サルペドンが笑うのは初めて見た・・・、二人とも微笑を浮かべている。
 「言ったろう、お前の性格は把握している・・・。
 美香からも、お前のことはさんざん聞かされていたしな。」
 「そ、・・・そんな。」
 「スサの仕事をしてないときの美香は、姉バカだよ、まさしく。
 タケル、お前が高校の空手大会で優勝したとか、
 北京の武術大会で日本人でありながら、対戦者を全員ノックアウトしたとか、
 それこそ、そこら辺の女子校生のように、飛び跳ねながらオレに自慢しにくるんだ。
 そんな美香の思いを・・・裏切るなよ・・・。」

美香姉ぇがそんなマネを? オレの事で!?
タケルには美香のそんな姿を想像すらできない。
中学まで美香の剣術の足元にも及ばず、
逃げるように、素手で戦える武術を求めて必死に身につけた。
・・・その動機が美香には気に入らず、
各大会で優勝した時も、美香が手放しで喜んでくれた記憶などないのだ。
他人事のように、「ふーん、良かったねぇ。」と、
感動の薄いお言葉をもらえるのみだった。
いや、・・・ご馳走は作ってくれたかな・・・。
・・・それだけでも十分、嬉しかったものなのだが・・・。
 
 「・・・オレ、本当に何も知らねーんじゃん・・・。」
たった一人の家族の事でさえも・・・。