Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ランディ プロローグ4

 
ここは砂漠の国アルヒズリ・・・。
その東南に位置するちっぽけな町だ。
交易の主なルートからも外れ、取り立てて農産物が豊かと言うわけでもない。
強いて言えば、あんずが結構生えてるので、収穫の時期は遠方に商売に出かける。
後は牧畜が主だが、これでもなんとかやってける。

いま、彼らが働いていた館・・・。
それは、このちっぽけな町の中でも外れに位置する。
周りに民家はない。
理由がある。
それは、この館が、俗に言う売春宿だからだ。
誰が最初に、そんな商売を始めたかは、もうどうでもいいが、
この館には5人の売春婦と、一人の用心棒兼雑用係、
そして、最近流れてきた病弱な母親と娘・・・その8人で暮らしている。
性には厳格なこの国も、ある程度は大目に見られている部分はある。
それは町のモラルや風紀を乱さないこと、
それを暗黙の条件として、経営を許されているのだ。

なぜなら、この国は平和ではないから・・・。
北方から、蛮族イルがしばしば侵略を繰り返し、
多くの兵隊や女子供が犠牲になっているのだ。

夫や家族を失った者・・・家や住む場所を失った者は決して少なくはない。
このちっぽけな町・・・、クエタは人口も少なく、
イルもこんな所まではさすがにやってこない。
故に、戦を逃れるために、当てもない女たちが流れ着いた場所・・・、
それが、ここの売春宿なのである。
子持ちのレィチェルがやってきたのは、さすがに全員どうしていいか躊躇したが、
病弱なレィチェルを突き放すわけにも行かず、
何とはなしに、新しい家族を迎えて、この売春宿は陽気な営業を続けることになったのだ。