Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ランディ プロローグ56

 
 「ランディ・・・と申すか・・・!」
置物のように身動き一つしなかったエア王が、初めてランディに声をかけた。
 「は・・・はいっ!」
 「そなたの祖父・・・シャルローズは元気でおるか・・・!?」
 「はっ・・・は・・・、いえ・・・。」
今頃ランディは思い出した。
・・・というか、祖父の話も完全に信じていなかっただけなのだが。
どうやらシャル爺さんとエア王が若かりし頃、仲が良かったというのは本当の話だったのか?
 「我が祖父は・・・つい先日・・・」
一度、ランディは視線を落す・・・
自分がこの手で殺したなどと、口が裂けても言えるものか・・・!
 「我が祖父は・・・他界いたしました・・・、
 今わの際に・・・エア王陛下と・・・この国に尽くすようにと・・・私に遺言を・・・!」

 ベッドに隠れて女を見殺し・・・さらに祖父を殺し・・・そして嘘まみれの英雄か・・・。
 とんだ救世主だな・・・オレは・・・。

だが、周りの目には、
自らをあざ笑うランディの挙動が、誇り高き祖父の死に悲しむ若き青年の姿に見えたようだ。
周辺の老貴族からは、シャル爺さんの死を悼む言葉が聞こえてくる。
そしてその悲しみはエア王も同様である・・・。
 「なんと・・・!?
 ・・・さようか、今一度、昔話に花を咲かせたかったが・・・、
 だが、シャルローズは、自らの代わりにそなたを送ってくれたのだな・・・。
 我が友よぉ・・・、
 心から礼を言うぞ・・・、
 安らかに・・・ねむってくれぃ・・・!」

先ほどまでの歓待が嘘のようだ、
老王の言葉に宮廷全体が、シャル爺さんの死を悼んでいる・・・。
 もし、自分の嘘がばれたら、どんな扱いを受けるだろうか・・・?
 だが、シャル爺さんの遺言に関しては嘘はない・・・。
 このまま、自分が宮廷に仕えるのなら、
 きっと爺さんもあの世で満足だろう・・・。