Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ランディ プロローグ55

 
小柄な老人の姿からも、
この国を治めてきた圧倒的な威厳は、初対面のランディでさえも感じ取れる。
左右の笑顔を浮かべる貴族達とは対照的に、
この赤い絨毯の一直線上にいるエア王とランディ・・・、
彼ら二名だけが神妙な面持ちで向かい合っていた。

段取りや礼儀などではない・・・、
ランディはまるで自然な動作でひざまずいた・・・。
 この方こそ・・・自分の仕えるべき王・・・
 この鎧に身を包んだ自分こそ・・・、
 これから自分の身を立てる本当の姿だ・・・。

彼の直感が全てをスムーズに行動させる・・・。
 そうだ・・・これがオレの・・・本当の・・・あるべき姿なのだ・・・!

そして・・・そうして自分を消してしまえば、
あの忌まわしい過去に苛まされなくて済む・・・
恐らくランディは無意識のうちにそう、願ってたのかもしれない・・・。
それが、ランディがエア王に忠誠を誓う本当の理由、
いずれ、彼自身それに気づくだろう。
今は・・・。

 「・・・かような姿での拝謁・・・、
 真にご無礼をお許し下さい・・・!
 勅命によりまかりこしました・・・、
 ランディ・サラフェディーニと申します!」
その言葉とともに更なる拍手の渦が。
・・・だが、しばらくすると拍手の途中から、
場にそぐわないざわつきが起こり始めていた・・・。
どうもランディの苗字のことが原因のようだ。
辺りから「サラフェディーニ」の単語が要所要所に湧き上がる。
 そうか・・・自分の先祖はこの国の大貴族だったそうだからな・・・、
 それを知っている者もいるのか・・・。
中には嗚咽の声を漏らす者もいる。
 「おおお、あの鎧は・・・まさしくサラフェディーニ家代々伝えてきた漆黒の鎧・・・!」
ますます城内の騒ぎは大きくなっていった。