Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

エリナと優一 1

 
東京都K区・・・。
つい先日起きた、外国人英会話教師の殺害事件、
そしてその犯人が首を斬られた死体で見つかった事・・・、
またそれとほぼ前後して、辺り一帯に起きた大規模の停電事故・・・。
そんな事件は段々と忘れ去られてゆきつつあった。
ちょうど中学三年生は高校受験もだいたい済み、
感動的な卒業式や、新しい門出に胸をわくわくさせる・・・、そんな時期を迎えていた。

あの「少年」斐山優一も、
何か思うことがあったのか、
かつての不良仲間との付き合いを疎遠にし始めていた。
一から説明するのは面倒くさいことこの上なかったが、
前回の殺人事件で、
「警察からヘンな疑いを持たれないようにする為に行動は控える」、
・・・という口実がうまく利用された。
また、もともと彼の不良仲間は、ほとんどが就職組か専門学校に流れたため、
斐山優一と同じような進路に進む者もいなかったのである。

・・・実際、斐山優一も、偏差値が高い都立学校を選んだのは、
旧友との縁を切るつもりが最初からあったのかもしれない。
元々、仲間だとでも思っていない。
自分もこのまま、裏社会で正式にデビューする道も考えたが、
もっと刺激的で楽しい生き方も探してみたかったのだ。

さて、もはや授業もほとんど終わり、この日は早めに家に帰ることにした。
別に家に帰って特にやることもないのだが、
「縁を切る」と決めた連中と、今更つるむ気も完全に失せていたからだ。
少年斐山優一は、自宅の庭に止めてある黒塗りの高級車に目を留めた。
 誰か来てるのか・・・。
彼の親は大学教授だ・・・。
てことは、客は同じような偉そうクラスの年寄りだろうか?

玄関のドアを黙って開けると、目の前に見慣れぬ二足の革靴が揃えてある。
「臭い匂い」をなるべく嗅がないように、
優一は足早に二階の自室へと向かう。