Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

・エリナ とーじょーっ!

エリナと優一 28

エリナの口元がちょっと開いている・・・。 良くも悪くも、想定していた事態が肩透かしに終わって、 安心したのと期待はずれだったのと入り混じった表情なのだろう。 服も完全に着なおし、髪を軽くすく・・・。 戻れと言われたのに、エリナはしばらく、優一…

エリナと優一 27

ここで優一が空気を変えた。 「いいよ、もう。」 「あ・・・え?」 最後まで試しても良かったのだが、 優一は途中であることに気づいたのである。 「服、着ていいぞ。 ・・・ところで、エリナ、お前、全く拒否しない所を見ると、 こういったことも想定内って…

エリナと優一 26

さて、話を戻そう。 エリナと優一の顔の距離は10cmほどの距離だ。 だが、近づく優一の顔に戸惑ってはいるようだが、エリナの顔に拒否感は見られない。 じっ・・・と優一の瞳を見返すのみだ・・・。 「その・・・優一さん、わたしは・・・あなたに従うよ…

エリナと優一 25

「はぁい、そうですー。」 「・・・ごくろーなことだな・・・、 オレが品行方正ならともかく、 碌な人間になってない場合はどうすんだ? とんでもない悪党になってる場合だってあるだろ?」 「そうですか? そうは見えませんけど?」 その言葉に優一のイタズ…

エリナと優一 24

「あ、はい、・・・そうです、 それが使命です・・・。」 「もっと、真っ当な手段もあったんじゃないか・・・?」 「はい、そうなのですが、 私達の村も、政治的な問題で、中国政府を絡めたくないのです。 ・・・チベットの状況はご存知ですか? あなたは私…

エリナと優一 23

さらに笑い転げようとした優一だったが、ここである記憶が甦りつつあった・・・。 夢・・・。 子供の頃から何度となく見る夢・・・。 「あいつら」が見せるのか・・・他の原因か・・・。 何度となく見てきた同じ内容の夢・・・。 「天使・・・!?」 よおく…

エリナと優一 22

その間、記憶は殆ど残っていないが、 ずっと昔から・・・物心つく頃からそれは頻繁に行なわれていた・・・。 まさか、そんな赤ん坊の時分からだとは!? 自分の両親・・・斐山夫妻が自分を引き取ったのは、 そいつらの意図する所なのか、偶然なのかはわから…

エリナと優一 21

シリス・・・自分の本当の名前・・・。 「シリス・・・か、 あんまりピンとこねーな・・・ま、そんなもんかな、 それより族長の一人息子? なんでそんな大事な跡取りを捨てたりするんだ?」 「それは誤解です! あなたは捨てられたんでなく、消失されたので…

エリナと優一 20

はぁ~・・・。 優一はため息をついた・・・。 自分が日本人じゃない事は知っていた。 自分のルーツがどこなのか? 自分が誰の血を受け継いでいるのか、そう簡単に調べられるとは思っていなかったのだが、 こんな形で、あっさり明らかになるなんて・・・。 …

エリナと優一 19

「・・・なぁ、アンタ・・・エリナって呼んでいいか?」 「あ、はい! どうぞ!!」 「お前・・・オレの顔を見てどう思った?」 最初、優一の質問の意図を掴めず、 答えるの躊躇しているエリナ・・・。 勿論、こんな言葉は誘惑しているわけでも、口説きのと…

エリナと優一 18

「・・・開いてるぞ、入れよ・・・。」 エリナ、廊下の暗がりでガッツポーズ! この時間までに、優一が問題児であるということは、 両親の口ぶりで把握していた。 ・・・勿論、彼女だって緊張しているのだ。 「はい! 失礼します・・・!」 ガチャ・・・ 扉が…

エリナと優一 17

「いや! ホントにいいから・・・!」 事態を重く考えた母親はさらに引き止める。 「ダメよ・・・! あ、でもどうしてもというなら・・・私が一緒に・・・。」 「いいえ、お母様もお父様もご心配いりません、 ごゆっくりここでお過ごし下さい。 ・・・少し、…

エリナと優一 16

そして時刻は夜10時・・・。 役人は早々に帰り、 エリナの2階の部屋の片付けも、夫妻の協力もあったおかげですぐに終わった。 その他、家の習慣、バスルームの使い方・・・、 いや、実際、時刻も遅くなっているので、 一人息子の帰らないうちに、夕食・入…

エリナと優一 15

そんなこんなで、お互いの話はとんとん拍子に進んでいた。 しかし、斐山夫妻の胸のつかえはまだ下りない・・・。 だが、それをこの場で切り出すきっかけがないのだ・・・。 すると・・・これもタイミングがいいと言えるのだろうか? 場の進行役とも言える役…

エリナと優一 14

夫妻は口をあんぐりと開けて驚嘆している。 日本語は完璧だ。 イントネーションがやや、ぎこちないだけで語彙も豊富だ。 そこらへんのドキュン高校生より、多くのボキャブラリーを身につけていそうである。 「お・・・驚いた、 よく、ここまで日本語を身につ…

エリナと優一 13

「はじめまして、 エリナ・ウィヤードと言います、 ウィグルという村からやってきました・・・。」 あわせて、いそいそと夫妻はお辞儀を返す。 なにしろ、 父親はどうしても聞きたいことがあるようだ。 「あ・・・えーと、エリナ君、 日本語、ホントにうまい…

エリナと優一 12

ぴーんぽーん! 「おはようございます、文科省の谷口です!」 斐山邸に二人の客が訪れた。 中年のスーツ姿の男と、先ほどの外国人女性・・・。 訪問予定時間ぴったりだ、 斐山夫妻はやや、緊張しながら来客を出迎える。 ・・・目いっぱい笑顔を作る準備をし…

エリナと優一 11

そろそろ自転車の中年女性も歩けるようになったようだ、 足は引きずってるが大事には至ってないだろう・・・。 女性は礼儀正しく、エリナと呼ばれた子にお礼を言い、 泣いてる男の子にも「ごめんねぇ、驚かせちゃってぇ・・・。」 とお詫びを述べる。 男の子…

エリナと優一 10

「凄い凄い! お姉さん、この子を助けたんですか!? どうやって!?」 「あ・・・え、と、無我夢中で・・・。」 少女は照れながら、言葉を選ぶ・・・。 見ればその長い髪は薄くグレーがかっており、背中まで延びている。 そういえば、その瞳も色素が薄いの…

エリナと優一 9

山本依子がその人物を発見した・・・。 「あ・・・あの子!?」 山本依子の向いている方向には、 ・・・一人の男の子を抱いた髪の長い女性が立っていたのだ・・・。 まだ肌寒い季節だが、七部袖の淡い色のジャケットにジーンズのカジュアルめいた服装、 そし…

エリナと優一 8

「きゃあああああっ!!」 何事っ!? 三人が、突然聞こえた叫び声の方を向くと、 一人の中年女性の自転車が坂道を猛スピードで下っていた。 余りの突然の出来事で、 彼女たちには何がどうしたのか、瞬時に判断できなかったが、 この自転車のブレーキワイヤ…

エリナと優一 7

・・・三月末、中学を卒業したばかりの男女が三人、地元の道を歩いていた・・・。 特に何をするでもなく、ただの暇つぶしに会ってるのかもしれない。 「わぁ、今年桜が早いねぇ? あそことか、もう咲き始めてるよっ!」 「あっ、ホントだ! ねぇ? 恵子んち…

エリナと優一 6

夜、食事の片づけを終えた母親が、小声で自分の夫に話しかける。 両親はともに、息子の耳のよさを知っている。 「ねぇ、あなた・・・。」 「ん?」 「今日のあの・・・留学生のお話・・・。」 「ああ・・・。」 「その留学生の村は、15年前私たちが調査し…

エリナと優一 5

「オヤジ、 せいぜいとんでもねぇドブスが来るといいなぁ? そうしたら、心配いらねーもんなぁ?」 「優一!!」 「・・・まぁ、アンタの言いたいことはわかったよ、 ただ、オレもそんな先の事は自信ないからね? 相手次第だよ・・・。」 優一も自分の気まぐ…

エリナと優一 4

「はぁん、いーんじゃーん? この家はアンタの家だし、好きにすればぁ・・・。」 「そうか・・・、それでだな・・・、 問題はその子・・・うん、女の子なんだそうだ・・・。」 「プッ・・・、何考えてんだよ、オヤジの知り合い? 危機管理能力ゼロか・・・?…

エリナと優一 3

・・・どうやら誰かがこの家にやってくるらしい・・・。 しかしそうは言われても、父親が「はい、そうですか」と言えるわけもない。 自分の息子が不埒なマネを犯しますよ、とも言えないし、 もちろん、その来客の身の安全も保障できるはずもない。 この日、…

エリナと優一 2

階段の手前で応接室に一瞬、目をやると、 ホントに偉そうな中年男性が二名、談笑してるのがガラスの隙間から見えた・・・。 「父親」も気を使ってるようだな・・・。 優一の興味はそこで途切れた。 自分の部屋でとっとと服を着替えて、音楽でも聴く。 とりあ…

エリナと優一 1

東京都K区・・・。 つい先日起きた、外国人英会話教師の殺害事件、 そしてその犯人が首を斬られた死体で見つかった事・・・、 またそれとほぼ前後して、辺り一帯に起きた大規模の停電事故・・・。 そんな事件は段々と忘れ去られてゆきつつあった。 ちょうど…