Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

エリナと優一 3

 
・・・どうやら誰かがこの家にやってくるらしい・・・。
しかしそうは言われても、父親が「はい、そうですか」と言えるわけもない。
自分の息子が不埒なマネを犯しますよ、とも言えないし、
もちろん、その来客の身の安全も保障できるはずもない。
この日、そんな時間もかけずに二人の来客者は帰っていったが、
斐山家に持ってこられた頼み事は、一度留保されることになったようだ。
もっとも、話の流れからすると、斐山教授が拒否できる雰囲気でもなさそうだ・・・。

父親はしばらく考え込んでから、二階へ上がり、息子の部屋をノックした。
 コンコン
優一は答えない・・・。
 「・・・優一、帰っているんだろ?
 開けるぞ・・・。」
部屋の扉が開けられた後、優一は一瞬だけ父親を見上げたが、
何の興味も示さずベッドで読書を続けている。
父親はしばらく無言で話あぐねていたが、
意を決して息子に話しかけた・・・。
 「優一・・・そのままでいいから聞きなさい・・・。」
 「・・・。」
 「さっき来てた人たちは、文科省の人たちで、父さんが昔世話になった人たちだ・・・。」
 「・・・。」
 「・・・それで、まぁそれはどうでもいいんだが、
 私たちに頼みごとをしてったんだ・・・。」
そこで初めて優一が聞き返す。
 「何て?」
 「今年の四月から、留学生を一人、この家で面倒を見てほしい、ってことでな。
 その留学生は、これからお前が通う向山高校に、一年間留学が決まってるんだ・・・。」
 「ハ? オレと同じ学校ぉ? 一ねぇん!?」
 「・・・ああ、学年も一緒だ・・・。
 向こうに私の書斎があるだろ?
 そこを潰せば、まぁ部屋は用意できるんだが・・・。」