エリナと優一 6
夜、食事の片づけを終えた母親が、小声で自分の夫に話しかける。
両親はともに、息子の耳のよさを知っている。
「ねぇ、あなた・・・。」
「ん?」
「今日のあの・・・留学生のお話・・・。」
「ああ・・・。」
「その留学生の村は、15年前私たちが調査した村の近隣の出だというけど・・・。」
「ああ、その話か・・・
もしかしてお前も気になったのか・・・?」
「もちろんよ・・・、
確かにウチが、ホームスティ宅の候補として選ばれるのは分るけど、
本当にそれだけの理由なの・・・?」
「・・・15年前、私たちが優一を拾った時、
普通なら現地の人たちや行政が、引き取るべきだった。
だが、
みんな・・・どこで生まれた子供が判断できず、
なおかつ・・・あんな銀色の髪の赤ん坊を気味悪がってしまっていたからな・・・。
当時、あの村に行政なんて、立派なものもなかったし・・・。
子供のいない私たちには、天からの贈り物に見えた・・・。
その後、髪の毛は黒ずんできて・・・今はグレーがかった色に落ち着いたから、
そんなに目立ちもしないが・・・。」
「私、あの子があんなふうに育ってしまったのは、つらいけど・・・、
顔立ちとかはいい感じに成長してくれてると思うわ・・・。」
「そうだな、
優一の顔つきは現地の人間とは全く違う。
・・・どちらかというとヨーロッパ人に近いかもな・・・。
日本人・・・ぽくもないとは言えるが、
幸い、今の時代は、あんな顔つきで日本社会に溶け込んでも、そんな違和感ないもんな・・・。」
「ごめんなさい、
・・・私、考えすぎてたみたい・・・、
今回のことは、ただの偶然・・・よね?」
「ああ、きっとそうだろう・・・。」