Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

有人火星探査船フォーチュナー 10

 
既にノートンには、これから自分たちが乗り越えねばならない、
過酷な選択を伝えていた。
ノートンだって覚悟の上で宇宙空間に出ているのだ。
ここまでトラブルが起きて、優先されるのは、
とにかく地球に帰ることだと理解している。
任務の失敗や、国の名誉なんてどうでもいい。
愛する家族にもう一度会えるなら・・・。
それだけが彼を支えていたのだ。

そして、いよいよ最後の行動の時がやってきた。
これより、地球の軌道に合わせて進み、
特定の角度で、地球の大気圏内に突入するのだ。
そして大気の摩擦という灼熱地獄の洗礼を浴びて、
赤道上を何周かしつつ高度を下げ、
ギリギリの角度で着水する。

なるべく海岸近くに着水したいが、
正確なデータが揃っていないため、
余裕を持って、陸から少し離れた所に着水しよう。
管制室と連絡が取れないとはいえ、
アメリカ領内なら、空軍なり、海軍が自分たちに気づいてくれる。
それまで、頑張ればいいだけなのだ。
 「・・・これより宇宙船フォーチュナー、地球の大気圏に突入する・・・!
 全員、持ち場の再確認せよ!
 ・・・ノートン、大丈夫か!?」
これより宇宙船に凄まじいショックが浴びせられるのだ、
睡眠用ベッドには、それに耐えうる固定具などありはしない。
ノートンは自力で自分の持ち場に座り、
ベルトを固定している。
そして、最後の気力で、自分の仕事をまっとうしていたのだ。
 「・・・二人の足は引っ張らないよ・・・、
 オレもこの船のクルーだ・・・!
 責任は果たすぞ・・・。」