Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

上陸 2

 
その小船たちは、すぐさま、この波に浮かぶ宇宙船の頭部に集まってきた。
船上には日に焼けた体つきの男たちが何人も見える。
 「・・・ありゃ、アジア系ですなぁ・・・、でも日本人じゃなさそうだ。」
 「ツナヒロ、中国語は?」
 「ニィハオしか知らん・・・あと、シェイシェイか。
 ・・・面倒だなぁ・・・。」
ツナヒロは船外ハッチを操作する。
多少、時間がかかるが、周りの船も近付くのにそんなに早く集まれるわけでもないので、
タイミング的にはちょうどいいのだろう。
彼らは、「様子をうかがっているのか」一定以上の距離には近づいてこない。
機械的なハッチの開く音とともにツナヒロが顔を出した。
 「は、ハロー? ニィハオ? こんちわぁ~♪」
精一杯の笑顔をふりまいて挨拶するツナヒロ。
漁民は一斉に腰を抜かせてしまったようだ。
ツナヒロに挨拶しかえせた者など誰もいない。
みんな大騒ぎで狼狽しまくっている。
 (そんなに驚かなくてもいいじゃねーかよ・・・、て、誰も英語すらしゃべれねーのか?)
彼らが落ち着くのを待ってから、
ツナヒロは必死で意思疎通を図ろうとした。
身振り手振り、もう何でもいい!
 「あー、電話! 連絡!お偉いさん! オレら、あんたらの来た方向! 戻りたい!」
理想を言えば、ヘリで迎えに来てもらいたいか、
牽引船で引っ張ってって欲しいわけだが、
それを彼らに理解できるのか?
その気になれば、今、海に浮かんでるロケット頭頂部にも勿論、推力はある。
再度、エンジン点火して突き進むこともできるのだが、
勢いがありすぎて、周りの船を巻き込んでしまう恐れもあるので、ここまで来たらやるべきではない。
しばらく漁船員たちは、仲間同士で喚き散らしていたが、
数人の若い者たちが魚取り用の網を持ってきた。
・・・まさか、あれで。
そのうち幾艘もの船が、ためらいながらも協力してくれるようになったようだ。
宇宙船フォーチュナーは網で絡めまくることとなる。
まぁ、一艘の船じゃかなりつらいことだろう、
これでなんとか陸地には戻れそうだ。
ツナヒロは精いっぱいに歓喜の表情を浮かべ、
謝意を示す。
・・・ようやく陸地だぁ!!