Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

施設の男 9

 
 「お前、なかなかいい動きをしていたな、
 あれと同じ感覚で動け。
 勿論、大きな音や声を立てるな。」
 「立てたら?」
 「オレがお前を殺す。」
どうしろってんだよ・・・!
 やっ! っと、ツナヒロが塀を登ると、下で待っていた男は風のように一足で塀の上にジャンプした。
どんな跳躍力をしているんだ・・・。
 「こっちだ・・・。」
男は小声でツナヒロに指示を出す。
塀の上で音を立てないように歩くどころか、間違ったら地面に落下するかもしれないのに・・・。
そのまま塀を伝うと、すぐに狭い屋敷の小窓があるところまでたどり着いた。
開閉式の扉があるようだ。
男は身をかがめて中に入ると、すぐにツナヒロも招き入れた。
 「ほ・・・他に見張りはいないのか?」
 「私がその見張りの一人だ、各自テリトリーがある。
 そのテリトリーから外れなければ、そうそう見つかることもない。」
納得してそのまま男についていくと、
ツナヒロの耳に、あの悲鳴が聞こえ始めてきた。
前回よりは声が小さいのか、ここまで来ないと気付かなかったのだろうか?
男は見越したかのように、ツナヒロの疑問に答えた。
 「先日、お前がこの屋敷の辺りをウロウロしてたと言うからな、
 『場所』を屋敷の奥に移動しただけだ。」
 「い、移動? な、何の話だ?」
 「すぐわかる。」
そのうち、男は恐ろしい場所に移動しようとし始めた。
これは通路じゃない!
通風口のようなものじゃないか!?
それとも天井裏?
さすがにツナヒロが一人で入れないと判断したのだろう、
男は先にその狭い出入り口によじ登り、手を差し出してツナヒロを促す。
 「安心しろ、今はお前のカラダを切り刻んだりはしない。」
・・・安心できるかぁ!? そんな事を言われて!