Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

施設の男 12

 
・・・どれぐらい固まっていたのだろう、
男は背後からツナヒロの肩に手を置いた・・・。
 「もういいか?」
 「・・・え、あ?」
 「これがこの館の秘密だ。
 他にも、いろいろ恐ろしい部署がいくつもあるが・・・、
 今、お前が知るべきなのはここだけで十分だろう、
 わかったら、帰るがいい・・・。」
 「あ、ああ・・・。」
男はそのままツナヒロの前を歩いた。
もと来た道を慎重に窺いながら、暗がりの外壁の上までゆっくり進む。
登ってきた場所まで来ると、男はツナヒロを外の地面にまで下ろすのを手伝う。
跳び下りたのでは音や動きが目立ちすぎるからだ。
ツナヒロはここまで自動的に体を動かしていたが、
最後にこの男に聞かなければならないことがあった・・・。
 「なぁ・・・。」 
男は塀の上でツナヒロを見下ろしながら答えた。
 「なんだ?」
 「なぜ・・・オレに見せた・・・。」
男はしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと口を開く。
 「お前の反応を見たかった。」
 「反応?」
 「ショックを受けたか?」
 「も・・・もちろんだ!」
 「それで・・・どうするんだ?
 この国の現状を知って・・・これから。」
今度はツナヒロが喋れない。
一度、塀の上の男の視線をかわし、うつむきながら自問する。
 「・・・こんな恐ろしい事はやめさせる・・・?
 バカな、オレの言うことなんか聞くわけない!
 ・・・じゃあ? お・・・おれは・・・」