Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

施設の男 13

 
 「結論を言う・・・!」
塀の上から、男はしびれを切らしたのか、ツナヒロの思考を中断させた。
どっちにしたって回答は出せそうもない・・・。
 「ツナヒロ・・・、お前はこの国を去れ。」
 「ど・・・どうやっ・・・い、いや、簡単に言うなよ!!
 オレはこの世界に誰も身内がいないんだぞ!?
 たった一人で何ができる!?」
 「いいか、ツナヒロ、
 お前が見た光景は、この国の正体のほんの一部なんだ。
 子供が簡単に死んでショックを受けたのか?
 勘違いするなよ、
 あんなものを止めさせたところで、この国の体制は変わらない。
 ここでは人間の命など、子鳥の羽より軽いんだ・・・。」
そうだ、忘れていた・・・。
ドナルドを刺した兵士も、何の裁判も行った様子もなく処刑した・・・。
あれはオレの歓心を買うために、その場の判断だけで行われただけに違いない。
あの時、気づくこともできたのに・・・、この国の姿を・・・!
 「そ・・・それは理解した。
 だからといってオレには・・・!?」
 「ならばお前に必要なのはその意志だ。
 ・・・別に、お前がそんな物はどうでもよくて、
 このまま、この国で贅沢な暮らしがしたいなら、それも一つの選択だろう。
 無理強いはしない。
 ・・・その方がいいか?」
ツナヒロは声を搾り出した・・・。
男の冷たい視線は終始、変わらない。
それこそ強い意志をたたえた光が、ツナヒロをにらみ続けている。
 「か・・・考えさせてくれ・・・。」
 「一晩だけ時間をやる。」
 「な!? たった一晩!?」
 「俺の方もグズグズできないんでな、
 この国を出るなら、脱出経路や行くあてはオレが何とかする。
 お前は荷物だけまとめておけ。」
 「そ・・・そんな。」