ユェリン 2-2
「起しちゃったか・・・悪いな・・・。」
「いいえ? だいじょうぶです・・・、ツナヒロ様お加減は?」
「・・・だいぶ良くなったよ、
このままお前を抱いたまま、眠りたい・・・。」
ユェリンの頭はツナヒロの広い胸板の上にある。
「うふ・・・それは良かったです。
ユェリンもこうしてツナヒロ様に抱きつかれたまま眠りに落ちたいですわ・・・。」
「・・・なぁ、ユェリン・・・?」
「はい?」
「もし・・・もし・・・九鬼の誰かが・・・、
オレからお前を引き離そうとしたらどうなる・・・?」
瞬間、ツナヒロの胸の上に置かれていたユェリンの指に力が入る。
「そんな・・・そんな事は考えられません!」
「仮にだよ、
お前は九鬼の誰か・・・誰かは知らないけど、
それなりの権力を持ったヤツに、オレのところに行くよう命令されたんだろう?
なら・・・そいつに、今度はオレのところから離れろと命令されたら、
お前は戻らなくてはならないんじゃないか・・・?」
「いやです! あなたと離れたくなんかありません!!
ツナヒロ様、・・・今夜の宴で何かあったのですか!?
それとも、もう私のことなんか・・・。」
「違う、そんなんじゃない・・・、
ただ、怖いんだよ、いつかお前とのこの幸せが、
ガラガラ音を崩れて壊れたらどうしようと思っちゃったらさ・・・。」
その表現は半分正しく・・・半分適切ではない・・・。
何故なら、ツナヒロの心の中では、もう既に・・・ボロボロと崩れ始めているのだから・・・。
「ユェリン?」
ツナヒロの言葉にユェリンは答える事が出来なかった・・・。
それどころかガタガタとカラダを震えさせ始めている。
「ユェリン、どうしたっ?」
「ツナヒロ様・・・そ、そんな恐ろしい事を・・・、
で、でも、もし、そんな事を考えてしまわれるなら・・・、
どうか、これ以上、・・・ユェリンのことを見ないでください・・・。」