Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ユェリン 2-5

 
しかし、その質問をすることによって、
ツナヒロの真意を悟られることだけは避けなければならない。
もし、彼女がツナヒロを監視する役目を負っているのなら・・・。
 (オレがここから逃げ出したら、お前はついてくるか・・・?)
この質問ではダメなのだ!
 「ゆ・・・ユェリン・・・。」
 「・・・はい?」
 「も・・・もしオレが・・・そうだな、例えばこの国で罪を犯して・・・、
 この首万里城から追い出されるようなことになったら・・・、
 その時はお前を連れ出したい・・・。
 お前は・・・ついてきてくれるか・・・?」
 「勿論です・・・ユェリンは地の底まであなたのお傍に従います・・・。」
ツナヒロは、その言葉が聞けただけで十分だった・・・。

翌朝ツナヒロは馬車を一台、三条に要請した。
口実は簡単だった。
宇宙船フォーチュナーから運び出された機材の一部は、ほとんどツナヒロの宿舎にある。
それらを仕事場に持ち込むために馬車が必要と言うわけだ。
「人夫もつける」と、三条は言ってきたが、
荷の積み込みは、宿舎の者たちに手伝わせるからいらないと言っておいた。
そして夕方頃には宿舎の方に馬車が届けられたようだ。
ツナヒロは早びけして、機材を運び込んだ。
食糧や水も運びこんだら感づかれるかもしれない。
だが、幸運にも宇宙飛行時の簡易食料がまだ残っている。
カッチリ閉じられているケースの中に、レトルトとして安置されているので、他人に中身はわからない。
極端な話、
もし仮に・・・ユェリンがスパイだったとしても、
最後の最後までだまくらかして、馬車に乗せてしまうことができれば・・・。

作業の最中、ユェリンは不思議そうな眼をして、ツナヒロ達の仕事を見守っていた。
昨夜の男は、ツナヒロがユェリンを連れていくと言ったら、どうするのだろう?
反対するだろうか・・・。
そういえば、あの男自身はどうするのだろう?
ツナヒロを逃がした後は、何食わぬ顔であの施設にい続けるのだろうか?
ツナヒロ自身、この後の展開を予想することすらできず、
夜になるのを待つだけだった・・・。