Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ユェリン 2-6

 
 「ツナヒロ様、まだ荷造りが終わらないのですか?」
ユェリンが不安そうに聞いてきた。
昨日の会話があったせいか、やけに不安そうな表情だ。
無理もないか・・・。
 「ああ、もう終わってるんだけどね、一応確認を・・・。」
そう言ってユェリンを寝所まで下がらせた。
既に夕食も済ませ、お腹もひと段落している・・・。
なお、馬車を手配してあるということは、当然その御者も一緒に来ているのだが、
彼は荷物の積み込みを手伝わせた後、この宿舎の召使い用の寝床へ詰め込んでいる。
それにしても・・・、
あの氷のように冷たい目をした男は、
この首万里城から、どうやってツナヒロを脱出させるつもりだろうか?
この馬車そのもの自体、逃亡には無理だとか言いだすかもしれない。
だが、宇宙船から持ち出したこれらの機材を置いていく事はどうしても避けたい。
別に九鬼の人間たちに使いこなせる筈もないだろうが、
これらをヒントに、何かとんでもない武器を開発でもされたら、
ここを出ていく意味さえもなくなってしまう。
そんなことを考えながら、ツナヒロも宿舎の中に入り、とりあえずユェリンの元に向かおうとした時だ、

 その声は廊下の窓の向こうから聞こえてきたのだ・・・。

 「どうやら、覚悟は決まったようだな・・・。」
ビクッ!!
誰だって驚くはずだ、ツナヒロは心臓をバクバクさせながら、誰もいないはずの窓枠の先を見た。
そしてすぐに「彼」を見つけたのだ。
昨夜の髪の長い男を・・・!
 「お・・・お前か! 大丈夫なのか、
 あの屋敷を離れて・・・?」
 「大丈夫なわけがない、
 警戒任務を抜け出したことがばれたら、厳罰だ。
 鞭打ち50回は覚悟しないとな・・・。」
 「そ、それでどうやってオレを・・・。
 あ! 表の馬車は見たか?
 オレの荷物には旧世界の文明の機器が何点かある。
 あれを九鬼の手に渡したら、少々厄介なことになるぞ?
 だから、馬車で運びだしたいんだが・・・。」