Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

第三十話

 
 「うっしっしっしっ! これで決まりだぁっ!!」
朝田歓喜! 当のエリナは静かに突っ立ったままだが、その胸中たるやただ事ではない。
別に一日ぐらい、あの男とつきあわされる事など、どうとも思ってないが、
何よりも目的を遂げられなかった悔しさが彼女の心に広がりつつある・・・。
 「エリナちゃぁん・・・!」
ヨリが心配してエリナの腕を抱きしめるも、
もはや強がることしか彼女にはできない・・・。
 「だ、大丈夫ですよ、たった一日・・・。」
一方、朝田は遠くからエリナに向かってVサインを・・・。
いや、これはVサインではない?
 「二日だ! エリナちゃん、二日分ねー!」
 「二日? 何のことです?」
思わず、左右の加藤とヨリに首を回して尋ねるも、彼女たちとて・・・。
 「あ!!」
加藤が真っ先に気づく。
 「もしかして、次に男子のやる三段跳びって、女子はないのよ!
 あれは男子だけの競技・・・!!」
ガーン!
エリナの計算がもろくも崩れてゆく・・・。
 そんなこと知らない・・・。
勿論朝田はトップを狙いに行く。
 「朝田! 14メートル10!!」
どうやら確定のようである・・・。
もはや、この記録を破れる者はいない・・・。
エリナは夢遊病者のようにふらつくと、
へなへなとその場にしゃがみこんでしまった・・・。

加藤恵子・・・それを見ていた彼女は行動を起こした・・・。
特に深い考えを持っていたわけでもない。
ほとんど直感のようなものだけで、彼女は踵を返し、ある男子生徒の元へと足を運んだのだ・・・。
 「ちょっと、恵子どこに!?」
ザッザッザッザ・・・!
早歩き・・・それは加藤恵子の意志の強さか、
彼女は一直線に、一人暇そうにしている彼の元へと向かった・・・。
その少年の名は斐山優一・・・!