Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

第三十二話

 
加藤は自分でも何をしているのかわからなくなっていた。
斐山優一ならこの状況を何とかしてくれる・・・?
そんな明確な根拠はどこにもない。
ただなんとなく、彼ならやってくれる・・・その方法を知っていそうな気がする・・・。
たったそれだけで、ここまでの暴挙に出てしまったのだ。
 あああああ、あたしったら何て事を・・・。
だが、もう遅い。
斐山優一はゆっくりと立ち上がり、
加藤恵子をにらみつけた。
もう、彼女は蛇に睨まれた蛙のようだ・・・、もはや一言だって発することができない。
で、でもこれだけは絶対言わなきゃ・・・。
 「ひ、斐山君、あのね、
 エリナちゃんがあんな約束したのは、あの朝田君て人をやり込めるため・・・、
 あの子、怒ってたのよ、
 斐山くんがチビとか男女とか言われたことに対して・・・。
 エリナちゃんはそれが許せなかったの・・・!」

この加藤の騒ぎを聞きつけた周りの一部生徒が固まる中、
斐山優一は視線を外し、
加藤の最後の言葉にも反応することなく、
凍りつく加藤恵子の脇をゆっくりと通り過ぎる・・・。
あまりの緊張から解放されて、思わず彼女はそこにへたり込んで放心状態・・・。
 「ちょっと、恵子、なにやってんのよーっ!?」
心配してヨリがダッシュで駆けてきた。
エリナの方は、鮎川に任せてある。
それにしても、この子なんてことを・・・。
前からネジが緩いとは思ってたけどこんな・・・。

しばらくして加藤が我に返ると、
キョロキョロ辺りを見回していた。
彼女が探しているのは斐山優一の姿である。
・・・まさか・・・。