Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

第三十三話

 
そのまさかだ、
斐山優一は三段跳びの計測の準備をしていたのである。
他の生徒は誰も、彼を気にも留めていない。
これまで彼は平均的な数字しか出していないし、
クラスの中でも、この前の朝田とのやり取り以外、
これまで優一は目立つ言動を一切とってない。
・・・ただ、加藤とエリナ・・・、その二人だけが、優一の行動に目が釘づけになっていたのである。

そして優一の順番が回ってきた。
優一はスタート直前、軽く足首や膝を伸ばすと、
一瞬、間を溜め・・・軽やかに飛び跳ねた後、
獲物を見つけた狼のように、前傾姿勢から一気にマックススピードで走りはじめる!!
それを見ていた生徒達に衝撃が走る!
それまで大した運動能力を示さなかった斐山が、今とんでもない速さで駆け抜けていくのを・・・!
彼はあっという間に跳躍地点に達すると、
滑らかな・・・まるでシルクを思わせるような無駄のない滑らかな動きで、低空を滑空!!
左・・・左・・・右っ!!
最後の跳躍のみ上空へと舞い上がる・・・その姿はまるで時間が止まっていたかのようだ・・・。

ズサッぁ!!
計測係が我に返る!
その着地地点は今まで誰も足を踏み入れてない、まっさらな未踏の砂地。
 「斐・・・斐山優一・・・
 !? 15メーター55ぉっ!?」
これは完全に全国レベルの数字だ!
あまりの出来事に体育教師も集まってきた!!
 「なっ、斐山、もう一回飛んでくれないかっ!
 いや、お前を疑ってるんじゃない、
 この数字が本物なら、もっと記録を伸ばすことも・・・!」
だが、勿論、そんな面倒を聞き入れる斐山ではない。
 「じょーだんじゃないっすよ、
 ファールもしてないし、測り方にも問題ないんでしょ?
 なら、とっとと他の奴を終わらせたいんすよ・・・。」