Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

第三十七話

 
 母親は言う。 
 「そ、そう? 
 でもね、エリナちゃんもかわいい女の子なんだから、
 優一に気を許しちゃダメよ?」
エリナは優一の母親に悪い印象は持っていない。
むしろ、良くしてもらってることに感謝している。
だが、今の言葉をエリナは看過できない。
 「お母さん? 不思議です・・・。
 今のお母さんのお言葉は、ご自分のお子さんに向けるべきものに思えません。」
 「えっ、そ、それは・・・エリナちゃん、
 それは優一のことと言うよりも、日本の一般的な高校生の・・・。」
 「私も日本に来る前、日本の世情については勉強しました。
 それが・・・正しいものであるかどうかはわかりませんし、
 人によってもいろんな方がいるのも理解できます。
 学校にも、楽しい人から困っちゃうような人も大勢、いるようですけど、
 その中でも優一さんは立派な方だと思いますよ。」
最初は、エリナのことを「お嬢様育ち」にしか見えなかった母親も、
ここまではっきり、自信を持って息子を褒められたことに対し、
次にどう反応して良いかわからなくなった。
 息子を他人に褒められたことなんて何年ぶりなのだろうか?
 「え、エリナちゃん・・・、あなた・・・?」
 「あ、・・・生意気な事を言ってごめんなさい、お母さん・・・、
 そ、それじゃ、二階に行ってきます・・・!」
トットトット・・・。
エリナはちょっと反省しつつ、優一の部屋にリンゴのお皿を持ってあがっていった・・・。
一方、母親はエリナの発言に感極まり、
夫の元に行ってソファに腰を沈み込ませる。
父親にも今の会話は聞こえていた。
思わず、彼女の肩を抱き、遠い目でつぶやいた。
 「ほんとにいい子だな、あの子・・・。
 もし、あの子が来たことで、優一の未来に変化が起きるというなら・・・。」
 「えっ、・・・ええ、私たちはそれを受け入れるべきなの、よね・・・うっ、うぅ・・・。」