Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

第三十八話

 
コンコン!
 「優一さん、よろしいですか?
 リンゴいかがです? 剥きましたよぉ!」
シーン・・・。
反応はないが、そろそろエリナも慣れてきた。
何も言わないということは、入っても構わないということだ。
 「失礼しまーす・・・。」
ゆっくりと扉を開けると、優一はパソコンで何か調べ物をしているようだ。
 「ん・・・、そこに置いとけ。」
こっちを振り返りもせずに、まるで無関心だ、
エリナはこれで満足する。
拒絶的な態度さえされなければそれでいいのだ。
他人が聞いたら、「何でそこまで」とも思うかもしれない。
だが、優一に仕えるべく教育を受けてきたエリナは、この状態で何ら不都合はない。
・・・理屈の上では。
だが、今日は昼間の優一の行動に感謝しまくっていて、何とか優一にその気持ちをぶつけてみたい。
 どうすればいいだろう・・・。
 「あ・・・あの、優一さん・・・。」
さすがにそういう時はエリナも緊張する。
 「なんだ?」
 「そ、その、今日はホントにありがとうございました・・・。」
そこで優一の指はピタリと止まった、
・・・単に、一瞬何のことかわからなかっただけなのだが・・・。

優一はゆっくり椅子を回転させる。
 「あの件か・・・、
 ちょうどいい、エリナ、お前にはっきりと言っておく。」
 「は、はい!」
いけない、優一さんに怒られるっ?
 「エリナ、お前、オレに、村の後継者を継ぐなら暗殺される可能性すらあるとか言ってたよな?」
 「あ、え、・・・は、ハイ。」
 「なら、目立つ行動をとるな。
 別にお前の田舎の跡取りになる事を考えてるわけでもないが、
 目立つと俺の行動が制限される。
 それぐらいわかるよな?」