Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

第三十九話

 
 「あ、す、すいません! 優一様!!
 つ、つい・・・。」
そうだ、私ったらなんて失敗を・・・!
つい浮かれて調子に乗って・・・!
これじゃ従者失格・・・。
もう、エリナは顔を起こすこともできない。
下をうつむいて、可愛いおでこを優一に向けるだけだ。
 「・・・その『優一様』ってのも危ねーなぁ、『さん』はなんとかセーフだが・・・。」
 「ああああ、優一さん、ごめんなさいっ!」
もう顔から火が出るっ!!
エリナ顔、真っ赤・・・。
エリナは普段、「優一さん」で統一しているが、
自分が従者だとの立場を、強く認識している時には、ついつい「様」づけしてしまう。
優一にとっては、それもまたうざったいので、
あえてエリナに対し、高飛車に出るような言動は控えてるつもりなのだ。
 ・・・ていうか、もう面倒でどうでもいい。
だから、どうしてもぶっきらぼうにならざるを得ない。
その代り、用がある時は遠慮なくこき使ってやるつもりではいる。
優一はため息をついて、椅子を戻した。
 「・・・ハァ、わかったならもういいよ、出てけ。」
 「あ、はい、・・・あの。」
 「なんだ、まだ用か?」
 「あの、・・・リンゴ。」
 「今、調べ物してるから、後で食う。」
 「でも、茶色くなっちゃいますよ、・・・あ、それじゃぁ・・・。」
 「ん?」
エリナは爪楊枝でリンゴを突き刺してから、恐る恐るその手を優一の顔に近づけた。
そんな真似をするならば、どうしたって身体ごと優一に接近する。
エリナの右手は、優一の座る椅子の背もたれに添えて、
互いの体温を感じそうな微妙な距離で、リンゴが優一の口の前にあてがわれた。
 「優一さん、はい。」
 ・・・こいつ・・・。
わかっているのか?
他の男がこんな状況、前にされたら理性が吹っ飛ぶぞ?