Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ウィグルの伝説

 
 「数万年前の古代王朝?
 その辺りで、スサと絡んでくるのか・・・。」
 「ええ、そうです、
 ウィグルという村が発見されたのは第二次大戦前ですが、
 その後の混乱で、一時は中国共産党に飲み込まれる危険もありました。
 タケルさん、あなたのお爺様が、
 彼らを説得し、志を一つにすることができたのです。
 貧しい村ではありますが、
 レアメタルの産出と、外からの侵入を拒む特殊な立地に恵まれ、
 血なまぐさい政治の世界からは、比較的独立性を保って今に至ってます。」
 「ダイアナはその・・・スサの・・・やっぱり、古代の神とやらの血筋に当たるの?」
 「そうですね、
 直系というわけではないようです。
 基本的に一族の長が、その正統性を保持するわけですけども、
 ダイアナはその長の親戚だそうです。
 彼女は高い知能を持ってましたので、推薦でスサに入ってきたのです。」

・・・はぁ、
ダイアナの家族にどんな顔をすればいいのか・・・、
恐らく、その村や生家には、彼女の生きてきた痕跡を見ることもできるはずだ。
自分自身、それを見ちまえば涙を堪えることもできないかもしれない。
だが、一番悲しいのは自分ではなく・・・。

 考え込んでいるのを見かねてか、
マリアはさらに、興味深い話もしてくれた。
 「タケルさん、
 これから向かうウィグルの伝説は少し、緒沢家のものとは趣を異にしますよ。」
 「え? 伝説? 復活するって言うスサノヲの神様のことかい?」
 「ええ、 ウィグルの村の伝説ではやがて『生誕』するのは、天使だということです。」
その時タケルは、これまででは聞きなれない表現に気づいた。
 「『生誕』? 『復活』じゃないんだ?」
マリアはにっこり笑う。
 「そうです、ウィグルでは『かつて王国が栄えていた』物語はあっても、
 それが滅びた原因についての伝承は一切ありません。
 そのせいか、やがて現れる『神』も、
 『復活』というニュアンスでは整合性が取れないのかもしれません。」
なるほど、そういうことか。