兄ピエリ
照れ笑いを浮かべながらフラアは辺りを見回す。
大体が子供のころからの顔見知りなのだ。
不安や警戒心など浮かべる必要すらない。
・・・でもここに来たのは・・・
あー、いたいた!
「お兄ちゃん!!」
カウンターの片隅に若い数人の男が固まっていた。
お兄ちゃんと呼ばれた男は、既に顔を真っ赤にしてはいたが、
妹の声を敏感に察知して後ろを振り返る。
「おお、フラア~、どうしたぁ、こんなとこにぃ~。」
そのグループの傍までトコトコやってきて、フラアはあきれ顔で兄をたしなめる。
「やっぱりここにいたぁ・・・、
飲みすぎだよ、
お母さんに言われてきたのよ、
どーせ、ゼペットさんの飲み屋で真っ赤になってるだろうからって、
つぶれない内に家に帰ってきなさいって!」
「あ~、まだ大丈夫だよ~、
・・・えーと、ホラ、太陽だってまだ残ってるし、あっちも赤い顔してんじゃーん?」
「・・・わっけ分かんない理屈こねないの!
ホラ、早く! お母さんの夕飯に間に合わなくなるよ?」
そのうちに兄の友人たちもはやしたて始めた。
「まーまーまー、フラアちゃん、
今日はせっかくのめでたい日なんだからさ!
ピエリはオレらで面倒みるよ・・・、
てか、フラアちゃんもここに座りなよ?
ジュースかお茶か、一杯ぐらいなら怒られないだろ?」
「えー、でもぉ~?」
兄とは反対側の席を空けられ、フラアは2、3秒迷った挙句、ちょこんと座ることを余儀なくされた。
二十歳前後のこの男たちは、遊び盛りで、女の子が大好きだ。
フラアを誘った少々柔らかい顔立ちの男は、
しげしげとフラアの成長ぶりを堪能した後(そんな見ないでください!)、
隣のピエリに向きなおる。