Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

町じゅうに広まってる噂

 
そう思った瞬間、デボアが席を立った。
しかも、呆気にとられるピエリを無視し、ケイデンスに「行こうぜ」と言って帰り支度を始めたのだ。
 「て、てめぇ、デボア!!」
すぐにピエリもデボアの腕を掴むが、無理やりデボアはその手を振り切り、店の外へと出てゆく。
ビールなんか飲んでる場合じゃない。
一度、ピエリはマスターに金を支払って追いかけようとしたら、
ここでも意外な態度をゼペットは見せたのだ。
 「・・・ピエリ、金はいらねぇ、おごりだ。
 だが、その代りもうここへは来んな・・・。」
何でだよ!!
そう食ってかかろうとも思ったのだが、今はデボアを追いかける方が優先だ。
第一、この一連のおかしな空気は原因は一つの筈。
なら、友人のデボア達から聞き出すのが一番手っ取り早いと思ったからだ。
ピエリは駆け足で店を飛び出し、
あっという間にデボアの背中に追いつき、その首根っこを力づくで振り返させた。
 「てめぇ、どういう了見だ!!」
にわかに、道の真ん中が騒然となる。
もっともデボアは大きな声を出すまでもなく、ピエリに乱された上着の襟を直しながら、
冷静に努めてピエリの顔を睨み返した。
 「・・・どうもこうもねーよ、オレらにつきまとうんじゃねーよ・・・。」
これが幼い頃からツルんで来た友人のセリフだろうか?
ピエリは何が起きているのか信じられない。
興奮して、今度は胸元をねじ上げようとするが、
デボアとて、そう何度もいいようにされては堪らない。
ピエリの両腕を払いながら、迷惑そうにデボアは大声を放った。
 「あー、うぜぇな!! ピエリ! てめぇ、何も聞いてねーのか!?」
 「何も!? 何の事だ!? いったい何があった!!」
そこで初めて、デボアは意を決したのか、
親指を立て、酒場の裏側に来いとピエリに合図する・・・。
 
三人が、人目のつかないゼペットさんの店の裏側に入ると、
ピエリは待ち切れずにデボアに食ってかかった。
 「さぁ、何があったんだかオレに教えろ!!」
デボアとケィデンスは一度視線を合わせた後、
ようやくデボアが口を開いた・・・。
 「いいか、よく聞け、ピエリ・・・、
 町じゅうに、お前の妹の噂で持ちきりだ・・・。
 今までお前らの耳に一度も入らなかったのか?
 お前の妹・・・フラアが実は魔女だったってな・・・!」