Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ヤズス会マグナルナ派

 
あまりに信じがたい言葉が親友の口から放たれた。
辺りは既に薄暗く、ピエリの視界には、二人の友人の突っ立ってる姿しか映らない。
耳に入る音も、もはや周りの喧騒としてしか認知できなくなっていた。
そしてピエリはようやく、
デボアの言葉の意味を飲みこんだ・・・
いや、飲みこんだはいいが、それを受け入れることなどできはしない。
 「な・・・何ほざいてるんだ!!
 そんな噂がって・・・お前らガキの頃から妹を知ってるだろ!!
 一緒に遊んだことだってある筈だ!!
 そんな噂がデタラメだって事ぐらいわかんねーのかよッ!?」
勿論、ピエリはそんな噂なんか根も葉もない濡れ衣と分かっている。
だが、何より信じられなかったのは、
友人たちがその程度の事で、自分たちを避けてしまったという事実だ。
だがこの神聖ウィグル王国で、
魔女と宣告を受けることは、この社会から抹殺される事を意味していた。
・・・時には本当に処刑されることすら・・・。
それほど、ヤズス会マグナルナ派が浸透するこの王都ラシでは、
魔女や魔術の儀式に対する迷信と偏見が強かったのである。

・・・開祖、月の天使シリスを崇拝するあまり暴走してしまった教義・・・。

今となっては、そんな風習が始まった原因を、
宗教面だけにとらえる必要はないのかもしれない。
実際は、法王庁がその絶対的権威を高めるために、
こんな迷信を助長させてきた結果であるかもしれないからだ。
病没間近の前国王・・・、
そして世間知らずの若き王子・・・アイザスには、
そんな下々の生活の苦しみなど、一顧する必要すらなかったのだし・・・。
勿論、宮廷の重臣たちの中には、魔女など迷信だと思ってる者もいた。
だが、彼らの個人的信念など吹き飛ばすほど、
既に法王庁の権勢は絶大なものとなっていた・・・。